OR学会中部支部 2018年度第1回支部講演会ルポ

2018年6月16日(土)に,名古屋市立大学山の畑キャンパスにおいて,OR学会中部支部2018年度第1回支部講演会が開催されました.参加者は24名(大学関係者15名,学生6名,一般3名)でした.

講演会は14:30からか開催され,ORの研究者2名の講演が行われました.

1件目は,水谷聡志先生(愛知工業大学)によって「最適点検・取替方策に関する拡張モデル紹介」という題で講演がなされました.信頼性工学の分野では,設備などの取替時期をいつ行うことが最適かを検討する取替問題が多く研究されています.この問題に,ランダムな時刻に発生する衝撃によって,損傷が発生する損傷モデルの応用も多く検討されています.講演では,取替問題と損傷モデルの基本を解説された後,それらを応用・拡張した取替問題をいくつか紹介されました.

2件目の講演は,小野廣隆先生(名古屋大学)により「資金循環問題」という題で講演がなされました.中央銀行における各銀行に資金を貸し付けに着目し,資金をどの程度の額を準備しておく必要があるか,どれだけ準備しておけば十分であるかといった問題を有向グラフによってモデル化されました.ネットワークフローによって問題を定式化できそうであるが,それとは異なる問題になることが述べられました.また,グラフの形態によるが,多くの場合がNP困難な問題であることが示されました.

どちらの発表も活発に質疑応答がなされ,モデル化とそれをいかに解くかの面白さが伝わる内容であり, ORの可能性が感じられる講演会でした.

第45回OR学会中部支部研究発表会・特別講演会 ルポ

2018年3月3日(土)に,ウインクあいち愛知県立大学サテライトキャンパスにおいて,第45回OR学会中部支部研究発表会・特別講演会が開催されました.参加者は48名 (大学関係者28名,学生16名,一般4名) でした.
研究発表会は13:45から開催され,学生による9件の発表が行われました.発表に対して1件の最優秀賞と2件の優秀賞が授与されました.
最優秀賞は,南山大学の山田史明さん(南山大学)らによる「治水インフラ施設の最適な設備更新計画策定手法の開発」に対して授与されました.複数の設備からなる排水ポンプ機場における設備更新計画を,更新コストを評価関数とした整数計画問題として定式化し数値例を挙げて議論されました.設備の劣化やコストだけでなく,設備の配置上の干渉なども考慮されていました.
1件目の優秀賞は,鈴木一輝さん(愛知県立大学)らによる「待ち行列モデルを用いた課題処理過程における課題分割手法の影響分析 -スタディスキル修得に向けて- 」に対して授与されました.複数科目の課題が到着するとき,課題を分割してスケジュールを立てる方法を待ち行列としてモデル化し検討されました.数値例として,待ち課題の中で得意科目の課題から順に行い,分割数を3とすると効率がよいという結果を示されました.
2件目の優秀賞は,西村隼太さん (名古屋工業大学)らによる「Mn/Gn/1待ち行列におけるサービスの制御」に対して授与されました.到着とサービスがそれぞれ系内人数に依存する待ち行列モデルにおいて,サービスを制御するとこの効用や期待利益などを解析的に計算されました.さらにサービスが指数分布,一様分布,一定分布,二値分布に従う場合について数値例を挙げて議論されました.
本研究発表会では,多くの興味ある研究が発表され,また質疑・応答も活発に行われました.若い研究者の育成とオペレーションズ・リサーチの振興に大変に有意義な発表会となりました.
特別講演会は,16:15から愛知大学の玉置光司先生により「秘書問題をおいかけて。」という題で行われました.秘書問題に関する概論から始まり,その歴史と,著名な研究者であるRobbins, Dynkin, Lindley, Samuels,Mosteller, Moriguti その他の先生方を興味深いエピソードとともに紹介していただけました.さらに,この分野における重要ないくつかの研究成果・定理についてもご説明をいただきました.玉置先生の最近の研究成果については,時間の都合上,簡単に述べられました.多くの研究者を惹きつけてきた秘書問題の魅力が伝えられ,定理に表れる数式に神秘的な魅力を感じた参加者は多かったと思います.時間に制限があることが残念であり,さらに聞き続けたくなる内容でした.

【2018年度OR学会中部支部総会・研究発表会・特別講演会・懇親会のお知らせ】

2018/03/01UPDATE:研究発表会プログラムを一部修正しました・懇親会申し込みを締め切りました。
2018/02/26UPDATE:研究発表会プログラムを一部修正しました・懇親会会場を記載しました
【2018年度OR学会中部支部総会・研究発表会・特別講演会・懇親会のお知らせ】

以下のように開催いたします. 皆さまのご参加をお待ちしております.

日時: 2018年3月3日(土)12:00~17:10
場所: ウインクあいち15階 (愛知県立大学サテライトキャンパス)他
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38
http://www.winc-aichi.jp/access/

時間:
12:00~12:50 支部総会
13:15~16:00 研究発表会
1.13:15-13:30    Bloom filterを用いたICNルーティングでのHamming距離特性  〇梅村一希,金子美博 (岐阜大学),山本博章 (信州大学)
2.13:30-13:45    待ち行列モデルを用いた課題処理過程における課題分割手法の影響分析 -スタディスキル修得に向けて-    〇鈴木一輝,奥田 隆史(愛知県立大学)
3.13:45-14:00    機械学習によるGI/G/s型待ち行列システムの性能評価    〇二井克, 奥田隆史 (愛知県立大学)
4.14:00-14:15    Mn/Gn/1待ち行列におけるサービスの制御    〇西村隼太,中出康一(名古屋工業大学)
5.14:15-14:30    配達日に自由度のある周期的配送計画問題に対する反復局所探索法   〇董航 (名古屋大学), 高田陽介 (名古屋大学)呉偉 (成蹊大学), 柳浦睦憲 (名古屋大学)
14:30-14:45    休憩
6.14:45-15:00    病院の最適設計ツール作成に向けて -外来患者の待ち時間推定-    〇市原寛之, 鈴木敦夫 (南山大学)
7.15:15-15:30    食品工場におけるシフト自動作成システムの試作    松崎佳人, 〇鈴木敦夫 (南山大学)
8.15:30-15:45    治水インフラ施設の最適な設備更新計画策定手法の開発    〇山田史明, 稲垣伸, 高見勲, 福島雅夫 (南山大学)
9.15:45-16:00    南山大学における定期試験時間割編成モデルの研究    〇五上裕士, 佐々木美裕 (南山大学)

16:15~17:00 特別講演
題目 秘書問題をおいかけて。
講師 玉置光司先生(愛知大学)
17:00~17:10 学生表彰式
17:30~19:30 懇親会 (チャイナ&ダイン 園)
参加費 5,000円
懇親会の申し込みは締め切りました
こちらよりお申込みください(懇親会のみ2月28日〆切)

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C3POセミナー #5ルポ

■C3POセミナー #5
2018年1月29日(月)午後3時より愛知県立大学サテライトキャンパスにおいて,C3PO #5( 中部地区・平日午後3時のORセミナー)が14名の参加者を迎えて開催された.

講演者の井田民雄(近畿大学バイオコークス研究所長)からは,講演題目「研究における失敗とひらめき」の下,まずバイオエネルギー分野での革新的な研究成果について説明があった.次にその研究成果を活用した脱化石資源を実現すべく持続可能なバイオエネルギー社会基盤の展望について言及された.講演後半では,若い人をエンカレッジするよう,革新的研究成果を得る過程における「失敗とひらめき」の大切さについて触れられた.

今回の講演はC3PO( 中部地区・平日午後3時のORセミナー)という試みとして実施した.これから支部活動の1つとして定着していくことを願っている.

開催案内 C3POセミナー #5

開催案内 C3POセミナー #5

□日時:2018年1月29日(月)午後3時~午後4時30分
□場所:愛知県立大学サテライトキャンパス
(愛知県産業労働センター「ウインクあいち」15階)
〒450-0002 愛知県名古屋市中村区名駅4丁目4-38
http://www.winc-aichi.jp/access/
□講演タイトル:研究における失敗とひらめき
□講演者:井田民雄(近畿大学バイオコークス研究所長)
□講演概要:
工学研究とは,哲学に近いあるいは理念を実現するために掲げた大きな目標に向かった前人未到の挑戦である.基礎研究を実証段階にまでの「死の谷」と呼ばれる関門,さらに,実証結果を持続可能なビジネスへ繋げる「ダーウィンの海」を飛び越える研究群,「実証科学」と呼ばれる実学である.では,この実学を貫徹するのに,何が必要か?何をしないといけないのか?何を勉強すれば良いのか?どの研究分野にも共通して必要不可欠なことは,「知恵」を集結し,「英知」を繋ぐことであると信じている.本講演では,バイオエネルギー分野での革新的な研究成果を解説し,脱化石資源を実現すべく持続可能なバイオエネルギー社会基盤の展望について,また「研究における失敗とひらめき」について講演する.
□参加費:無料
□問合せ先: 奥田隆史 (愛知県立大学) okuda@ist.aichi-pu,ac,jp
□「C3PO」について:「C」は中部支部,「3P」は午後3時,「O」はオペレーションズ・リサーチを意味しています.2016年度から開催しております.

OR学会中部支部 2017年度第2回支部講演会ルポ

OR学会中部支部 2017年度第2回支部講演会ルポ

2017年12月16日(土)14時30分より,愛知県立大学サテライトキャンパス(ウインクあいち15階)において,OR学会中部支部 2017年度第2回支部講演会が開催された.

講演会では最初に矢野均先生(名古屋市立大学)により「不確実状況下における多目的計画問題に対する意思決定手法」と題する講演がなされた.矢野先生が機関誌オペレーションズ・リサーチ(2017年 3月号)おいて解説された意思決定法に関して,わかりやすく解説していただいた.

引き続いて, 小市俊悟先生(南山大学)により「Togni試薬に似た化合物に対する機械学習を用いた安定性自動判別を目指して」と題する講演がなされた.小市先生は今秋までスイスに研究留学されていた.留学先での写真やエピソードを交えながら,留学先での研究成果について解説していただいた.

なお参加者は34名であった.

■C3POセミナー #4

■C3POセミナー #4
2017年10月25日(水)に,名古屋工業大学において,C3PO #4( 中部地区・平日午後3時のORセミナー)が22名の参加者を迎えて開催された.

講演者の柏田淳一氏(アビームシステムズ株式会社)からは,講演題目「グローバルで勝負する日本企業のIoT活用」の下,まずドイツ,米国,中国,日本のIoTへの取り組みにつついて説明があった.次にいくつかのIoT活用事例の紹介があった.最後に,IoTビジネスの今後の課題と,展望について言及された.

今回の講演はC3PO( 中部地区・平日午後3時のORセミナー)という試みとして実施した.これから支部活動の1つとして定着していくことを願っている.

【2017年12月16日(土)】日本OR学会 2017年度第2回支部講演会のお知らせ

★第2回支部講演会★
日時:2017年12月16日(土)14:30-17:00
場所:愛知県立大学サテライトキャンパス(ウインクあいち15階)
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38

■講演1 14:30~15:30
講演題目:不確実状況下における多目的計画問題に対する意思決定手法
講師:名古屋市立大学 矢野均先生

概要:
社会の多様化・複雑化に伴い,現実の意思決定問題は,複数の代替案集合の中から複数の評価基準に基づき,意思決定者の選好構造を反映した解を導出しようとする多目的意思決定問題として定式化できる場合が多い.一般に,多目的意思決定問題は,多属性決定問題と多目的計画問題に分類することができる.本稿では、不確実状況下における多属性決定問題に対する多属性効用理論について概略を述べた後、不確実状況下における多目的計画問題に対する意思決定手法について詳述する。

■講演2 16:00~17:00
講演題目:Togni試薬に似た化合物に対する機械学習を用いた安定性自動判別を目指して
講師:南山大学 小市俊悟先生

概要:
創薬の分野において重要なトリフルオロメチル化試薬の一つにTogni試薬がある.
Togni試薬は,すでに広く利用されているが,なぜ,試薬としてほどよく安定的に存在し,
また同時に,よい反応性を示すのかについては,まだ十分に解明されていない.特に,Togni試薬には熱力学的に,より安定な異性体が存在し,異性化せずに存在するためには,何かしらの仕組みが必要となる.実際,Togni試薬の官能基を一つ変えただけの化合物は,容易に異性化することが知られ,このような違いが生じる理由を明らかにすることが研究課題となる.我々は,この課題に対して,H.F. Schaeferらの先行研究をもとに,データ指向型アプローチによる解決を目指した.まず,Togni試薬のいくつかの官能基を別のものに置き換えて得られる,600を超える化合物に対して量子化学計算を行い,それらのデータベースを作成した.次に,それらのデータに対して,統計的な分析を行い,安定性に関わる構造的特徴を明らかにした.最終的には,機械学習,特にサポートベクターマシンを用いた安定性の自動判別システムを構築することを目指した.結果として,我々が予想した以上に複雑な機構が働いていることが示されたこともあり,安定性について結論づけられるところまでは至っていないが,この研究により得た知見は,Togni試薬に似た有用な試薬を開発する上で重要な着目点となる.

■懇親会
懇親会は申し込みを締め切りました。
講演会終了後(18:00~),会場周辺にてにて懇親会(会費5000円)を計画しています.
場所:うるる 名駅柳橋市場店
懇親会に参加される方は,会場予約の都合上,下記の事前申し込みを必ずご利用ください.多くの皆さまのご参加をお待ちしております.

■申し込み方法
本ページ最下部の申し込みフォームよりお申し込みください(締切11月30日(木)).
講演会は当日参加も可能てすが,準備の都合上,できるだけ事前申し込みにこ協力ください.なお,懇親会に参加される方は,席の確保のため,事前申し込みを必すお願いします.懇親会は申し込みを締め切りました。

■問い合わせ先
メールでのお問い合わせは, 中部支部支部長 奥田隆史(okuda@ist.aichi-pu.ac.jp)まで,お願いします.

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2017年度日本OR学会中部支部シンポジウム 「準モンテカルロ法の理論とOR」ルポ

2017年9月16日13時15分より,ウインクあいち(愛知県産業労働センター)15階の愛知県立大学サテライトキャンパスにて、2017年度日本OR学会中部支部シンポジウムが「準モンテカルロ法の理論とOR」というテーマで開催されました。会場には臨時の椅子を増やすなど大変な盛況でした(講演者4名, 教員17名,企業 3名,学生 10名,計:34名)。シンポジウムでは東京大学名誉教授の伏見正則先生から開会の挨拶をいただき,それに続き,この分野の最先端でご活躍される4人の先生方からご講演をいただけました。
政策研究大学院大学の諸星穂積先生からは「準モンテカルロ法の使い方」というテーマで、本シンポジウムの中心的話題である「準乱数」について,準乱数を構成する際の基本的な手法であるランダム化について,さらには準モンテカルロ法の適用分野に関する紹介をしていただけました。
東京大学の合田隆先生からは諸星穂積先生のお話とリンクする形で、前半部分はデジタルネットをはじめとした一様分布型の点集合に関してお話をいただきました。後半部分は関数クラスを制限した元での,超高収束型準モンテカルロ法について,また,この分野の課題について,ご自身の新しい研究を含めお話いただけました。
慶応義塾大学の今井潤一先生からは,「ファイナンシャル・エンジニアリングにおける準モンテカルロ法の効率化」というテーマで,金融工学において実際に問題となる積分計算に対して,どのように準乱数を用いれば良いのかご自身の研究を含めお話いただけました。理論研究だけでは分からない興味深い話題を提供していただきました。
立命館大学の原瀬晋先生からは、「64ビット高性能線形擬似乱数発生法の開発」のテーマでご講演をいただけました.メルセンヌ・ツイスタを代表とする擬似乱数生成器は今日計算機実験をする上で欠くことができません。この分野の最近の進展も含め,自身が開発された擬似乱数発生器についてお話しいただきました。
シンポジウムは教員,実務家,学生など多くのOR研究者が集い,短い時間でしたが大変有意義な意見交換ができ、ORの研究と普及に大いに貢献ができたものではなかったかと思いました.

OR学会中部支部 SSOR中部支部2017ルポ

2017年8月31日(木),9月1日(金),合宿形式の若手育成プログラム,SSOR中部支部2017が開催された.開催場所は,公立学校共済組合 蒲郡保養所 蒲郡荘である.
参加者数は47名であった.宿泊者数は36名で,登壇学生30名は全員が宿泊した.

今回のSSORの新しい点は2点ある.一つは,発表時間をショート・ロングの2種類を設けたことである.ショートの発表時間は5分程度,ロングは15分程度と設定した.これはできるだけ多くの学生に発表する機会を提供するためである.もう一つは,申し込み・アブストラクトの登録にクラウド環境(Google form)を活用したことである.混乱が起きないが心配したが,特に問題は生じなかった.

初日は13時から開始した.最初は,挨拶をかねて,奥田隆史実行委員長・(愛知県立大学,2016-2017年度支部長),今泉充啓・副実行委員長(愛知学泉大学)からSSORの意義ならびに注意事項についての説明があった.次に,キーノートとして中出康一氏(名古屋工業大学)より「マルコフ決定過程の理論と応用」をご講演いただいた.その後,長めの休憩を挟みながら3回のショートセッションを実施した.各ショートセッションでは6名の学生が登壇した.学生の所属は南山大学,名古屋市立大学,愛知県立大学,名古屋工業大学,静岡大学であった.その後,チェックインなどを済ませ,19時から21時まで,屋外でBBQスタイルの懇親会を実施した.21時でお開きにはしたが,竹島やビーチに散策にいく人もいれば,各部屋で懇親を続ける人などがいた.これこそが合宿形式でおこなう本イベントの意義である.

二日目は7時から9時までは朝食時間とした.9時からキーノートして金子美博氏(岐阜大学)より「ORスピリッツ 生涯研究者を目指して」をご講演いただいた.その後,休憩を挟みながら3回のロングセッションを実施した.各ロングセッションでは4名の学生が登壇した.学生の所属は愛知県立大学,岐阜大学,名古屋大学であった.最後はクロージングとして奥田隆史実行委員長が挨拶をし,13時30分,に終了した.

各セッションでの発表は完成されたものもあれば,まだ途中のものもあったかもしれない.しかしながら,人前で自分のしてきた研究について話すという機会は,若手が成長する上で重要であると思われる.今後も可能な限り発表の機会を与えていきたい.

文末であるが60周年記念事業のサポートに感謝する.