2016年6月11日(土)に,名古屋工業大学において,OR学会中部支部講演会(2016年度第1回)が22名の参加者を迎えて開催された.
1人目の講演者の前原貴憲氏(静岡大学)からは,講演題目「離散凸解析に基づく機械学習手法について」の下,離散凸解析,離散最適化問題において近年広く用いられる「劣モジュラ性」をキーワードに分野の様相,及び氏の最近の研究活動である計算広告について解説して頂いた.集合関数における凸性として,また凹性としてもみることができる劣モジュラの性質から,最適化問題,近似アルゴリズムの問題と非常に相性が良いことや,その応用の一例で計算広告における問題を懇切丁寧に説明頂いた.前原氏が指摘されたように, エントロピー関数,グラフのカット関数などが劣モジュラ関数であるように情報科学の様々な問題に現れ,その応用範囲はとても広いことが分かる.
今後のますます研究の要請が高まる研究対象であることが前原氏の講演を通じて十分に分かる内容であった.
2人目の講演者の三浦英俊氏(南山大学)からは,講演題目「DEAによる店舗の商圏属性分析と品揃えについて」の下,三浦氏らの研究グループが行なったを実際のある小売店舗の売上予測を重回帰分析を用いて解析したプロセス,及び商圏特性に合わせた売場構成(商品陳列棚の個数)をDEA(包絡分析法)を用いて決定するプロセスを具体例とともに解説して頂いた.
重回帰分析を用いた売上予測に関しては,商圏などを用いて分析されていたが,取り分け,同業他社店舗のよりも自社別店舗の方が影響を受けやすいとの報告は実際にデータを分析することでしか得られないだろう知見であり興味深いものであった.
また,DEAを用いた売場構成については,改装前,改装後の売り上げデータを用いた検証報告もなされたが,DEAがうまく機能していることが分かるものであった.
今回,三浦氏の紹介された一連の分析プロセスは,同業他社における分析のみならず,様々な業種においても応用が期待できる内容であった.