支部研究会報告

中部支部研究会ルポ   文責 岐阜大学工学部 金子美博

 去る6月19日,京都大学霊長類研究所教授の正高信男先生を講師として招き,「人間にとって障害とはなにか」という題目での支部研究会を開催した.講演のほぼ1週間前に,最新研究成果(サルもTV番組を楽しむ)というNHKの報道もあり,実にタイムリーであった.

masa 講演は,京都大学霊長類研究所の生い立ちから始まり,中部地区に在住する者には馴染みのあるトピックが幾つも紹介され,発達障害とは何か,という話が導入された.
 人間は言葉の認識能力に比べ,数の概念を本能的に認識すること,それは動物としての歴史があり,ライオンが群れの大小が比較できることや,ネズミが7~8までの数がわかることを裏付ける実験などが紹介された.
 障害といえば,日本ではとかくハンディキャップにのみ強調されるものの,過去から現在に至るいわゆる「天才」にまつわる逸話から,発達障害と思われる人物例が幾つも紹介された.学習障害が貴重な人的資源であるため,大切なことは,本人がそれを知り,周囲がそれを受け入れ,障害以外の能力を伸ばして対処すべき,という趣旨に唯々頷くだけであった.
 講演は,時折,数字を使った簡単な実験や謎のアルファベットの問いかけ,研究を紹介したTVでの放送の再生など,出席者も楽しめるような構成になっていて,講演時間の90分があっという間に過ぎてしまった.参加者は16名と小規模ながら,先生の巧みな話に一同非常に引き込まれた印象を受けた.

 30分の質疑応答の時間を設けたものの,それでは足りず,続きは懇親会で展開されることになった.筆者も同席したが,楽しいだけでなく,教育現場の様々な問題が話題としてのぼり,教育現場に関わる者として,大変勉強になった.参加者の中には,別の機会で,改めて正高先生への講演依頼を行うなど,先生の人気ぶりを改めて知ることになり,本研究会は大変意義深いものであったと自画自賛した.