中部支部研究会(北陸開催) ルポ

支部研究会1

2013年12月1日(日)に,金沢市にある金沢学院大学のサテライトキャンパスにおいて,日本オペレーションズ・リサーチ学会中部支部研究会が開催された.今回の研究会は,ともに中部支部に所属する東海地区と北陸地区のOR研究者の連携を強化することも一つの目的として企画された.

一人目の講演者は,名古屋大学大学院の橋本英樹氏で,「時間枠付き配送計画問題に対する発見的解法」という題目で講演いただいた.講演は,組合せ最適化問題に対する発見的解法とは何かという説明に始まり,メタヒューリスティックスや,昨今ではマスヒューリスティックス(Math+Heuristics)と呼ばれる手法を簡単に紹介された.その後,題目にある時間枠付き配送計画問題について解説された.配送計画問題は代表的な組合せ最適化問題であり,デポと呼ばれる拠点を中心として,複数の配送車が容量制約を満たしながら,なるべく短い距離で配送(もしくは回収)するための経路を求める問題である.橋本氏の研究対象は,その問題に配送可能な時間枠が付いたものであり,そのために,経路探索に加えて,スケジューリングの観点が必要となる.橋本氏は,配送可能な時間枠がリスト構造で表現できるような区分線形なペナルティ関数で表現されているような問題を考え,その場合に効率的に動作する近傍探索法を開発し,いくつかのベンチマーク問題に対して,既存の結果を上回る成果が得られたことを紹介された.

二人目の講演者は,南山大学の鈴木敦夫氏で,「愛知医科大学病院での麻酔科医勤務スケジュール作成支援システムの試作について」という題目で講演いただいた.講演では,まず,日本臨床麻酔学会でのご自身の講演及びその後の討論を踏まえ,現在,医療関連分野において,ORを必要とする問題が数多くあることを指摘された.また,ORに関する国際学会へ参加されて得た認識として,日本では,まだ,医療現場においてORの認知度は高くないが,アメリカでは,ヘルスケアにおいてORが既に広く活用されていることを紹介された.鈴木氏は,題目にもあるように,愛知医科大学病院で問題となっている麻酔科医の勤務や手術室のスケジューリングに対して,Excelと数理計画問題の汎用ソルバーを使った解決支援ツールを既に作成しており,現在,それを実際に使用し,その実用性を検証してもらっている段階にあるとのことである.このようなORを利用したシステムを作成する場合には,ユーザとの意思疎通が不可欠であり,ユーザの要望に柔軟に対応できるシステムが必要とのことである.このような知見も,今後,ORを普及していく上で,非常に重要であると感じられた.

支部研究会2

 

 

 

 

 

ルポ担当:南山大学 小市俊悟