賛助会員がORに関するメディア向け勉強会を実施

2025年5月20日、賛助会員である株式会社グリッドと共催で、「ORとは何か」をテーマにしたメディア向け勉強会を開催しました。会場とオンラインを併用したハイブリッド形式で行われ、AIをはじめとした、製造・物流・エネルギー専門紙のメディアの方々にご参加いただきました。

第一部では、山上伸会長が登壇し、ORの歴史と活用事例を紹介しました。ORは、複雑な現実の課題を数理モデルに置き換え、最適な意思決定を導く科学であり、その起源は第二次世界大戦にまでさかのぼります。
戦時中の英国では、レーダーの配置や輸送路の最適化に活用され、日本でも戦局分析のために同様のアプローチが行われていました。現代では、2024年パリ五輪での米国自転車女子チームの金メダル獲得に貢献するなど、スポーツの世界にも応用されており、東京近郊の鉄道ダイヤの改善など、私たちの日常生活にもその効果が息づいていることが語られました。

第二部では、グリッドCTOの梅田氏が登壇し、グリッドが取り組むAI × ORの社会実装事例を紹介しました。電力会社との電力需給計画の最適化では、年間で約10億円規模のコスト削減と業務時間の半減を実現したこと、また漢方メーカーとの在庫計画最適化では、従来数週間かかっていた年間計画の立案が、わずか15分に短縮されたことなど、実務に直結した成果が共有されました。

第三部では、山上会長より国内外のOR活用の差にも触れ、米国ではOR人材が企業戦略の中核を担い、Chief Algorithms Officer(CAO)という役職まで登場しているのに対し、日本ではまだ十分に浸透していない現状を指摘しました。「高度なアルゴリズム人材をどう育成し、企業で活かしていくかは、これからの日本の競争力を左右するテーマです」と語るともに大学と企業が連携し、博士号を持つ人材を育成し重用することの重要性が語られました。

今回の勉強会を通じて、ORが単なる学術領域にとどまらず、社会インフラや産業の現場で価値を生み出す存在であることを、メディアの皆さまと共有することができました。
日本オペレーションズ・リサーチ学会は、企業や自治体、研究者との連携を深めながら、社会に実装されるORの普及と発展に取り組んでまいります。