【開催報告】第305回 「待ち行列研究部会」(11月19日)

第305回部会報告

日時:
2022年11月19日(土) 14:00〜17:00
出席:
25名
場所:
ハイブリッド開催 (オンライン&東京工業大学 大岡山キャンパス 西8号館(W)809号室)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. M/G/1型マルコフ連鎖に対するレベル増分切断近似の誤差の解析
    大内 克久(京都大学),増山 博之 (東京都立大学)
    本講演では,M/G/1型マルコフ連鎖の定常分布の数値計算におけるレベル増分切断近似が計算結果に与える影響に関する解析が紹介された.レベル増分切断近似とは,本来非有界であるレベル上昇幅を数値計算のために有限で打ち切る近似であり,M/G/1型マルコフ連鎖に対する数値計算において標準的に用いられている.本講演では, 近似に用いる項数を増加させたときの近似誤差の漸近的な振る舞い,ならびに誤差上界の観点からレベル増分切断近似に対する数理的な解析を行った結果が紹介された.
  2. 2.任意の分布に従うバッチサイズ・サービス開始間隔をもつ集団サービス型複数サーバ待ち行列について
    中村 彩音(筑波大学),Phung-Duc Tuan (筑波大学)
    本講演では,待合室で客がグループを組み,特定の条件が満たされたときにサービスが開始されるという待ち行列モデルに関する解析が紹介された.初めに,サービス資源が十分に存在するという状況下において,このようなシステムは集団サービス型無限サーバ待ち行列と見なせることに着目し,その定常状態における性能指標が解析された.次に,より複雑な状況設定においてこのようなシステムを待ち行列モデル化し,顧客の戦略的な行動を考慮したゲーム理論的解析を行うアプローチが紹介された.
  3. 3.マルコフ連鎖を用いた微分方程式の近似モデルの提案とその極限解析
    渡辺 樹(早稲田大学)
    本講演では,マルコフ連鎖の High-density limit によって,マルコフ連鎖と微分方程式を結びつける手法ならびにその数理的解析が紹介された.特に,離散トーラス上の粒子系として表現されるマルコフ連鎖を題材とし,適当な正則条件の下で,その High-density limit が反応拡散方程式の解と結びつけられ,大数の法則や中心極限定理に類する性質が成り立つことが示された.また,今後の展望として,これを最適制御付きの粒子系における解析へと発展させるアイデアが紹介された.