第148回部会報告

日時:
2月19日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
22名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「コンピュータ通信網における輻輳の限界費用と輻輳情報」
    小沢利久 (駒澤大学)
    近年, コンピュータ通信網の輻輳制御を最適化問題として定式化し解析する研究が幾つかなされている. この定式化において,最適なリソースの配分はユーザの限界効用と輻輳の限界費用が均衡する点として与えられる. また, 輻輳の限界費用は輻輳制御法における輻輳情報としての意味合いを持つ. 発表では, 輻輳の限界費用について待ち行列モデルを基にした定式化とその特徴についての説明があった. さらに, 輻輳の限界費用を実際の輻輳制御に用いるための方法について述べられた.
  2. 「指定到着型の待ち行列について」
    大澤秀雄 (愛知学泉大学)
    医療診察システムなどにみられる指定到着型の待ち行列を考える. サービスを求める各客に対して, 到着の時間間隔が指定される. その時間内に, 到着した客のみがサービスを受けられ, 到着できない客は無視される. 指定時間の間隔は, 一般分布を持つものとし, 各客は指定された開始時間より遅れて到着する(遅れ到着時間). これも独立な一般分布を持つものとする. このような待ち行列で, サービス時間が指数分布, 1 サーバという基本的なモデルに対して, 定常における系内人数, 待ち時間に関する結果, およびある意味において, 最適な指定間隔の決定について報告された.

2000年02月19日

第147回部会報告

日時:
12月18日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
25名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Tail probabilities for fluid models」
    Tomasz Rolski (Wroclaw University and Tokyo Institute of Technology)
    In the talk we consider infinite buffer fluid models with a stationary random input rate Z(t) and constant output rate c. For such models we want to estimate the tail of P(X>x), where X denotes the steady state buffer content. In the first part we discuss a situation when Z(t) is superposition of on-off processes (or some semi-Markov processes). In the second part of the talk we assume that Z(t) is a centered stationary Gaussian process. We show among others, that in the short range dependence case, that is when the integral of |E(Z(0)Z(t))| with respect to t is finite, P(X>x) decays as H e^{-G^2B}e^{-G x} for x tends to infinity. Constants G and B are simple functions of the covariance function and c, however H is known only to be positive and finite. We also discuss the case when the fluid model is governed by the Fractional Brownian Motion.
  2. 「Matrix product-form solution for an LCFS-PR single-server queue with multiple arrival streams governed by a Markov chain」
    滝根哲哉 (京都大学)
    1つの有限状態マルコフ連鎖によって支配されている複数の到着流を収容する定常な単一サーバ待ち行列を考える. 到着した客は割込み再開型後着順サービス規律(LCFS-PR) に従ってサービスを受ける. 客のサービス時間は一般分布に従うとし, 異なる到着流から来た客のサービス時間分布は異なるものとする. このような仮定の下で, システム内にいる客がそれぞれどの到着流から来たかを表す string の定常分布が行列積解を持つことが示された. さらに, 行列積解を構成する率行列が, 全て, あるマルコフ連鎖の無限小作用素によって表現できることが示された. この結果は相型分布に対する従来の結果の一般化であり, また複数の率行列が 1 つの未知行列で表現されると言う点で, 計算量の面においても格段に効率的である.

1999年12月18日

第146回部会報告

日時:
11月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
23名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「実データによる電話受付センタの回線数の理論的解析」
    山下英明 (東北大学)
    ある電力会社では, 現在各事業所で行っている電話受付業務を, 1 ないし 2 箇所のコールセンタに集中化することを検討している. これは, 統計的多重化の効果により, 現状より少ない回線数で, 顧客に対してより良いサービスを提供するためである. ここで問題になるのは, コールセンタの回線数であり, 過剰な回線数は非効率である反面, 回線数の不足は顧客の呼のあふれを招き, サービスの低下につながる. 発表では, 現状のトラフィック調査の結果をもとにコールセンタの回線数を理論的に解析することを目的として, 電話受付業務システムを待ち行列の再呼モデルを用いてモデル化し, 与えられた呼の発生率や回線数のもとで呼損率を計算するアルゴリズムが提案された.
  2. 「Upper bounds for the decay rate of two-node Markovian queues」
    加藤憲一* (東京工業大学), 牧本直樹 (筑波大学)
    マルコフ到着過程 (MAP) を持ち, 相型分布に従う先着順サービスを行う 2 つのノードからなる待ち行列システムが考えられた. このシステムは, あるノードでサービスを終えた客が他方のノードへ推移することを許すことから, 各ノードの挙動は相互に依存関係を持つ. 発表では, まずシステムの安定性の仮定の下で, それぞれのノードに対して人数の定常分布の裾が幾何級数的に減衰することが示され, その減衰率の上界が MAPとサービスの相型分布のラプラス変換を用いて導出された. また数値計算によってこの上界の評価が行われた. さらに, この上界は, ある付加条件の下では周辺定常分布の厳密な減衰率を与えることが示された.

1999年11月20日

第145回部会報告

日時:
10月23日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
27名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「多数回最適停止問題の解法の考察」
    穴太克則 (南山大学経営学部)
    最適停止問題における Best Choice Problem の多数回停止問題についての解説があった. Chow, Robins and Siegmund の単調性の条件が成立するとき, 多数回停止問題の最適方程式から得られる停止回数に依存した OLA 関数の再帰性を利用して効率的に最適停止規則が導かれる解法についての講演で, 具体的な内容としては, (1) Best Choice Problem の簡単なサーベイ, (2) 無情報問題と完全情報問題の多数回停止問題, (3) 観測個数が確率変数の場合の多数回停止問題, (4) 観測値が未知パラメータを含む多数回停止問題, などであった.
  2. 「A direct approach to an M/G/1 queue with exceptional service」
    見学宏修*, 宮沢政清 (東京理科大学理工学部)
    例外的サービスのある M/G/1 型待ち行列は, プロキシサーバのキャッシュの利用などのようにサービス時間の分布が変化するモデルを表す. ここに, 例外的サービスの数は任意でよいとする. 従来, この例外的サービスモデルは待ち人数に着目し微分方程式を立ててその関係式から定常分布を求めるという手法が使われてきた. 発表では, 定常状態を仮定せず, 各稼働期間中で例外的サービスを受ける客と残りの客の待ち時間 (到着直前の残り総仕事量) に着目し, 逐次的にそれらの分布のラプラス変換を決定する方法が提案された. その結果を使って, 待ち時間の定常分布についての解析的表現が得られた. また, 待ち人数のラプラス変換についても同様な結果が得られた.

1999年10月23日

第144回部会報告

日時:
7月10日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
27名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Loss formulae for a cellular system with mobile subscribers in light traffic」
    山崎源治 (東京都立科学技術大学)
    We consider the problem of finding formulae for evaluating the performance measures of a cellular system with mobile subscribers. This system consists of many subsystems, called cells, each of which has a fixed channels. Subscribers with calls in progress (active customers) or subscribers without calls in progress (non-active customers) in a cell move to its adjacent cells according to a Poisson process whose rate is proportional to the number of active customers or non-active customers in the cell. Subscribers in the adjacent cells move to this cell according to a Poisson process with a fixed rate. The moving subscribers are either active or non-active. The channel holding times of active customers have an exponential distribution and the call generating times of non-active customers have an exponential distribution. In this paper, we present approximation formulae for the hand-off probability, blocking probability, and mean number of busy channels in a cell. The approximations are based on the light traffic limit for the stationary state distribution of the cell. The proposed formulae are numerically examined and the results show that the formulae are very good for practical parameter settings.
  2. 「セルフサイジング技術のGMN−CLへの適用システム開発と有効性検証実験」
    高野正次*, 森岡康, 長谷川治久 (NTT), 森川大輔 (NTTアドバンストテクノロジ), 谷川真樹 (NTT)
    高速マルチメディア通信のために研究開発している GMN-CL 網において, 予測困難なトラヒック変動に柔軟に対応可能な品質管理・帯域設計技術として, セルフサイジング技術が提案されている. 今回, 試作システムが開発され, 有効性検証のための実交換機を用いた実験が行われた. 発表では, Q長スナップショット方式について詳しく紹介され, (確率的な意味で)固定トラヒック下での収束, トラヒック変動への追随, 目標品質変更への対応といった, 帯域制御に必要と考えられる特性について, この方式について良好な実験結果が得られたことが報告された.

1999年07月10日

第143回部会報告

日時:
5月15日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
26名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「多重遊休期間をもつ単一サーバ待ち行列に対する摂動解析法の実装について」
    高木孝幸 (京都大学), 三好直人* (東京工業大学)
    多重遊休期間をもつ単一サーバ待ち行列モデルに対して, ある性能評価尺度の勾配を摂動解析法を用いて推定する問題が考えられた. この種のモデルに摂動解析法を適用しようとすると, 一般に摂動の影響が途切れなく蓄積され続けることになり, 推定量は標本路の長さに関して発散してしまう. 発表では, 摂動を含む標本路と同じ分布に従う別の標本路を考えることにより, 摂動の蓄積が有限回で済むような方法が提案された. また, 提案された方法の限界が指摘され, 同時に今後の課題についても言及された.
  2. 「到着過程に従属するサービスをもつ BMAP/SM/1 待ち行列」
    町原文明 (東京電機大学)
    バッチマルコフ到着過程を入力とし, セミマルコフサービスをもつ BMAP/SM/1型待ち行列が考えられた. サービス時間は到着位相に従属してもよい. このモデルは異なるサービス時間分布をもつ沢山の到着のあるモデルを含んでいる. はじめに, ゼロ時点でバッチ到着があり, その直後にそのバッチ内の一人の客のサービスが開始するという条件の下で, レベル {k+1} (系内客数が k+1 である状態の集合) から{k} への初到達時間が考えられた. サービス規律を割り込みのある逆順サービスにとることで初到達時間分布のラプラス‐スティルチェス変換が得られる. この結果を用いてビジー期間長分布のラプラス‐スティルチェス変換が得られる. ビジー期間長は仕事量が保存されさえすれば, どのようなサービス規律であっても変わらない. つぎに, 定常状態における仮り待ち時間が解析され, その分布のラプラス‐スティルチェス変換が求められた. 仮待ち時間もビジー期間長と同様にサービス規律に依存しない. この事実を使って先着順のサービス規律をもつ場合の真の待ち時間が解析された. 更に, 定常状態における真の待ち時間分布と客の退去直後における系内客数分布の関係式を用いて, この系内客数分布の母関数が導かれた.

1999年05月15日

第142回部会報告

日時:
4月17日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
26名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「大規模網におけるABRレート制御アルゴリズム」
    川原亮一* (NTT研究所), 小沢利久 (駒沢大学)
    大規模網において各コネクションへ帯域を重み付けして割り当てることのできるABR (Available Bit Rate) レート制御アルゴリズムが提案された. ATM レイヤにおける ABR サービスは, VC (Virtual Connection) ごとに PCR (Peak Cell Rate) とMCR (Minimum Cell Rate) を呼設定時に定め, 通信中は網からのフィードバック情報により各 VC の送信レートをそれらの間で制御しながら運用する. 従来の制御アルゴリズムのうち, スイッチにて VC ごとに状態管理を行わない方法では VC ごとに区別せずに一律に送信レートを通知するため, 網から通知する送信レートより低い PCR や高い MCR の VC が混在した場合には, リンク使用率の低下や輻輳状態の継続を招く恐れがある. またこのような制御方法では, 例えば料金格差に応じて各VC への帯域の割り当てを重み付けしたい場合にも対応できない. これに対し, VC ごとに状態やパラメータ (PCR, MCR 等) を管理して各 VC への通知レートを計算できれば, そのときのトラヒック条件に応じた各 VC への帯域の重み付け割当を容易に実現することができると考えられる. しかしながら, 多重 VC 数の大きい公衆網のような大規模網を構築する場合, VC ごとに状態を管理する方法を実装するのは困難となる. そこで発表では, VC ごとに状態を管理することなく, 大規模網において様々な PCR や MCR の VC が混在した場合にも, そのときのトラヒック条件に応じて各 VC へ帯域を重み付けして割り当てることができる制御アルゴリズムが提案された. また, 提案方式の有効性がシミュレーションにより評価された.
  2. 「MAP を入力過程として持つ M/G/1 型マルコフ連鎖のスペクトル解析」
    西村彰一 (東京理科大学)
    MAP を入力とするいくつかの待ち行列モデルへのスペクトル解析の適用が考えられた. M/G/1 type Markov chain の “idle 時のベクトル” の導出方法として, Gail 等で提案されたスペクトル解析だけでなく, 固有値を用いた平均系内人数の計算方法, 確率分布を求める Fourier Transform などが言及された. また, スペクトル解析の利点および問題点が論じられた.

1999年04月17日

第141回部会報告

日時:
2月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Stochastic Counterpart 法による生産システムの最適化」
    山下英明*(東北大学), 石塚陽, Z. Heng (上智大学)

    Stochastic Counterpart Method は, システムの性能指標値を
    あるサンプルパスでの実現値で近似することによって, 性能指標値を確率変数を含まない決定パラメータの関数として表現し解析・最適化を行う方法である. 発表では, 平準化生産システムを待ち行列ネットワークを用いてモデル化し, これにStochastic Counterpart Method を適用して, 近似スループットを最大にするサービス時間の割り当て問題とバッファ配分問題の2つの最適化問題を解いた例が紹介された.
  2. 「コンピュータシステムの自動スリープ機能を設計するための統合化モデル」
    岡村寛之 (広島大学)

    コンピュータシステムの省電力化を実現するうえで, システムがアイドル状態であるときにスリープモードへ自動的に移行すること (自動スリープ機能) は有効な手段であると考えられる.講演では, コンピュータシステムの期待消費電力を最小にする最適自動スリープ機能を設計するための確率モデルについて考察が行われた. 特に, トランザクションの到着が一般の再生過程に従う場合に幾つかの近似解法が提案された.

1999年02月20日

第140回部会報告

日時:
12月19日(土) 14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
25名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Queue length distribution in a FIFO single-server queue with multiple arrival streams having different service time distributions」
    滝根哲哉 (京都大学)

    サービス時間分布の異なる複数の到着流が連続時間有限マルコフ連鎖によって支配されているような定常な FIFO 単一サーバ待ち行列の結合客数分布を考察した. 定常状態における待ち客は全て系内経過時間 (attained waiting time) 内に到着したものであることに注目し, 結合待ち客数分布母関数ならびに結合系内客数分布がそれぞれ待ち時間分布及び系内滞在時間分布を用いて表現できることを示した. さらに, 結合客数分布を計算するためのアルゴリズムを示した.
  2. 「GI/GI/1 行列の加法的汎関数の漸近的行動 -再生過程に関する確率積分の収束-」
    山田敬吾 (神奈川大学)

    GI/GI/1 待ち行列の利用率が1より小さいとする. 待ち人数の値を変数とする関数を時間で積分し平均を引いて積分時間の平方で割った量が, 時間を大きくしたとき正規分布に収束することを示し, この正規分布の分散を計算する式を導いた. この結果は再生過程の加法的氾関数に関する中心極限定理とみることができる. 証明は, 再生点で区切って独立な確率変数列を作る通常の方法は採らず, Dynkin の公式と同様な表現を使ってマルチンゲールの項を取り出し, マルチンゲールに関する中心極限定理を適用した. この証明方法の優れた点は分散が直接計算できることである.

1998年12月19日

第139回部会報告

日時:
11月21日(土) 14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
24名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「吸収過程」
    中塚利直 (東京都立大学)

    待ち行列に現れる確率過程の安定性について, マルコフ過程に関するものと非マルコフ過程に関するものについてサーベイを行った. 特に, 非マルコフ的なアプローチの重要性を指摘し,3つの代表的な確率過程として, regenerative 過程,Borovkovの renovation 過程, 著者が提案している吸収過程を比較した. regenerative 過程の renewal 事象が Borovkovにより renovation 事象へと拡張されたことと, 吸収過程における不遡及性が renovation 事象の拡張となっていることの説明があった.
  2. 「Controlled Markov Set-Chains について」
    蔵野正美 (千葉大学)

    有限個の状態を持つマルコフ決定過程において, 状態推移確率行列の上限と下限だけがわかっている場合に, 最適な政策を決定する方法を論じた. 期待報酬は無限期間において割引率がある場合と無い場合の両方について考える. Hartfiel によるMarkov set chain の結果から, 可能な推移確率行列の集合が凸多面体になることを指摘し, この多面体の端点を使って計算を行う. これより, 各政策に対する期待報酬額の範囲は閉区間になる. これらの閉区間の集合に半順序を導入し, この順序の下での最適定常政策を決定した.

1998年11月21日

第138回部会報告

日時:
9月19日(土)14:00〜17:00
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
26名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Optimal Mobile Management for Personal Communication Systems」
    李頡*, 亀田壽夫 (筑波大学)

    移動体通信では, 各移動体の位置に関する情報を逐次更新しながら管理しているが, 移動対が LRA (location registration area) を変わるたびに位置情報を更新する方法では, 移動体がLRA の境界付近を動くときに更新が頻繁に起こるという問題が生じる. 本発表では, 移動したセル数があるしきい値に達したら情報を更新するMovement-based な方法に対する最適なlocation update および paging の方法について考察した.
  2. 「M/G/1/K Queues with a Smart Machine」
    馬場裕 (横浜国立大学)

    M/G/1/K および M/G/1 において, ビジー期間の最初の N 人の客のサービス時間分布が任意に与えられ, N 人目以降は同じサービス時間分布に従うモデルを取り上げ, M/G/1/K に対しては,補助変数法を用いてシステム内客数の定常状態確率に対する漸化式を導出し, それをもとに定常状態確率やシステム内滞在時間のラプラス−スティルチェス変換を求める方法を提案した. また, M/G/1 に対してはシステム内客数分布の母関数やシステム内滞在時間のラプラス−スティルチェス変換を導出し,これらのモーメントの計算式を与えた.

1998年09月19日

第137回部会報告

日時:
7月18日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
23名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「時間指定通信におけるリソース管理に関する諸問題」
    横谷哲也 (三菱電機)

    情報通信ネットワークにおける時間指定通信の必要性について説明するとともに, 実現にあたって生じる通信帯域やコネクション識別子などのリソース管理に関する問題点について解説を行った. 特に, 時間指定通信では即時系通信に比べて高速なCAC(call admission control) アルゴリズムが要求されること,即時系通信の受付制御において保留時間の推定が必要であることを指摘し, これらの問題に関する最近の研究状況を紹介した.
  2. 「F-net におけるルーティング方式とその性能評価」
    大原久樹*, 高橋敬隆 (NTT)

    ファクシミリ通信網においては, ノードの混雑状況に応じて動的ルーティング制御を行う必要がある. 本発表では, 効率的なルーティング方式を求めるための基礎的なモデルとして, 2本の有限容量待ち行列にそれぞれ集団到着があり, 溢れた呼はもう一方の待ち行列で処理されるモデルを考え, 状態依存の拡散近似法を用いた系内呼数分布の評価法を提案した. また, シミュレーション結果との比較によって, 近似解法の性質を調べるとともに精度の検証を行った.

1998年07月18日

第136回部会報告

日時:
6月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
24名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「A mixed event-driven and periodic measurement system with its performance」
    河西憲一*, 高橋敬隆 (NTT)

    分散型通信網での動的負荷分散制御においては, トラヒックの測定方式が重要となる. 本研究では, 従来の周期的な測定に加えて, 一定の大きさ以上の負荷が発生した場合にはその時点で通知を行うイベント駆動を併用する方式を提案した. 次に, この方式を M+D/G/1 待ち行列でモデル化して拡散近似による性能評価を行い, シミュレーション結果との比較も交えて, このモデルの性質を論じた.
  2. 「A Buffer-Inventory-Based Dynamic Scheduling Algorithm for Multimedia-on-Demand Servers」
    Huanxu Pan* (NEC Corporation), Lek. H. Ngoh (Institute of Systems Science, Singapore), Aurel A. Lazar (Columbia University)

    Multimedia-on-demand においては, 受け手側でデータの途絶が起こらないよう供給側は適切な送信が要求される. 本研究では, ディスク, 送信部, バッファ, サーバからなるモデルを考え, ピークレートでデータが読み出される場合でもデータの途絶が起こらないようにデータ送信量およびバッファ内蓄積レベルを制御する動的アルゴリズムを提案した. また, ピークレートの平滑化を考慮した場合へとアルゴリズムを拡張し, 数値例によって平滑化の効果を検証した.

1998年06月20日

第135回部会報告

日時:
4月18日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館H1-94号室
出席:
27名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「単純マネジメントゲームモデル: 生産待ち行列モデルの経済的トラフィックとバッファ設計について」
    松井正之 (電気通信大学)

    セールスセンターと生産センターからなるマネジメントゲームにおいて, 市場スピードと生産スピードの関係から経済的な最適トラフィックをゲーム論的に決定し, それをもとにしたバッファ設計方法を提案した.
  2. 「On the relationship between queue lengths at a random instant and at a departure in the stationary queue with BMAP arrivals」
    滝根哲哉 (京都大学), 高橋敬隆* (NTT)

    マルコフ型到着過程に従う集団到着のある待ち行列システムにおいて, 退去時点と任意時点でのシステム内客数分布の関係式を導出し, その式が複数サーバ, 有限バッファ, バケーションなどを含む広い範囲のモデルで成立することを示した.

1998年04月18日

第134回部会報告

日時:
3月14日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
26名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「時点型個別生産システムの待ち行列解析と最適制御について」
    神原一博 (電気通信大学)

    見積もり価格がある基準以上であれば受注を行うジョブショップで, 生産能力と基準価格が待ちジョブ数に応じて2段階の変化をするモデルを, 再生点に注目した隠れアプローチを用いて解析した. さらにその結果を用いて, 非協力型(受注価格最大,加工費用最小)と協力型(正味利益最大)のふたつの戦略の比較を行った.
  2. 「1/f トラヒックと待ち行列の裾確率」
    小林和朝(NEC C&Cメディア研究所)

    符号化された画像のデータは長時間依存性を持つと言われている. 本報告では, 数時間における放送画像をMPEG2で符号化した実データのスペクトル密度を分析し, それが 1/f の特性を持つことを示した. さらに, この性質がデータの非定常性を示していること, また, ここで言う非定常性が, 例えば, 観測時間を長く取るほど標本分散が大きくなるといった性質に対応していることなどが報告された.

1998年03月14日

第133回部会報告

日時:
2月21日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
27名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「到着・サービスが相型分布に従う多段直列型待ち行列の漸近解析」
    藤本衡(東京工業大学)

    上記待ち行列モデルの系内客数過程の無限小生成行列は, 一方の待ち行列の系内客数をレベルに取ることでブロック3重対角行列になる. ただし, 各ブロックが加算個の次元を持つため, 有限次元での結果をそのまま適用することはできない. 報告では, この無限小生成行列に関する性質を基に待ち行列長分布の裾が幾何的に減少することを示した.
  2. 「A two-queue cyclic-service system with mixed K-limited and 1-limited discipline: An application to F-net server performance」
    大原久樹(NTT研究所)

    ファックス網の大量同報では, 送達時間を保証するクラスとそうでないクラスを設けており, その処理機構は前者をK-制限式(一度に最大K個連続して処理), 後者を1-制限式で処理する2ノード並列待ち行列モデルで表現される. 報告では, K-制限式をBernoulii処理(ある確率で連続して処理)に置き換え,分解近似により平均待ち時間を求めた.

1998年02月21日

第132回部会報告

日時:
12月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
23名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「無限バッファ待ち行列の待ち行列分布を用いた正確な呼損率の計算」
    滝根哲哉(大阪大学)

    到着程過があるマルコフ連鎖に支配される離散時間単一サーバ待ち行列モデルにおいて, そのマルコフ連鎖がある特定の唯一な状態の時のみ到着数がゼロであれば, バッファ数無限の場合の系内客数定常分布からバッファ数有限の場合の分布が得られることを示した. この性質を用いて, OFF 期間長が幾何分布に従う ON-OFF 入力待ち行列モデル等の呼損率が容易に求められる.
  2. 「Decomposability of state-dependent multiclass queueing networks with signaling」
    宮沢政清(東京理科大学)

    Signal とは, ある契機をもとに他ノードの客を系内から強制的に退去させるなど, ノード間における相互的な作用を表わすために導入された概念である. 報告では, 各ノードがsymmertic queue であり, サービス分布が一般化アーラン分布に従い, 到着率やサービス率が系の状態に依存する待ち行列網モデルについて積形式解の存在を示した.

1997年12月20日

第131回部会報告

日時:
10月25日(土)14:00〜17:00
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
31名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「稀な現象のシミュレーションと待ち行列モデル」
    逆瀬川浩孝(早稲田大学)

    ATM 網のように非常に小さなデータ損失率が求められる通信網の評価や, 故障が非常にまれにしか起きないようなシステムの信頼性評価など, 稀な現象の評価は非常に重要となってきている. 報告では, そのような評価をシミュレーションにより効率よく行う方法としてインポータンスサンプリングによる方法を取り上げ, それを待ち行列モデルに適用し, 溢れ率等の評価量が少ない実行回数(実行時間)で精度よく求められることを示した.
  2. 「Pricing for network service」
    増田靖(慶応大学)

    Braess のパラドックスが示すように, 個々のユーザが自己の利益最大化だけを目標に行動すると, リソースの増加が逆に性能の悪化をまねくケースも考えられる. 報告では, 料金設定による需要の変動を含めた最適化問題として待ち行列網モデルを定式化し, そのようなケースも包含した現象の分析を行った. ここで料金設定による需要の制御は網の混雑を緩和させるひとつの方法であり, 各ユーザがそのサービスの価値とコスト(料金)を考慮してサービス要求量(需要)を決められるという特徴を持つ.

1997年10月25日

第130回部会報告

日時:
9月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
22名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Convergence rates in matrix analytic models」
    Jakob R. Moller (Lund University)

    同一確率空間上で定義されたふたつの確率過程が, ある時刻以降全く同じ挙動をとることを coupling という. 報告では, このような coupling に関する性質を用いることにより, マルコフ連鎖の過渡分布が定常分布に収束する速さを評価した. さらに, 到着の相関を表現するために近年盛んに用いられているMAP (Markovian Arrival Process) を入力とする持ち行列の仮想待ち時間解析等への応用も示された.
  2. 「A BMAP/G/1/K vacation model with closed-down and setup-times」
    牛志升(精華大学)

    ATM 網上での IP パケット通信では, 転送パケットが存在する間は ATM コネクションを設定しておき, パケットがなくなるとそれを解放する. このような方法は, 全稼働期間終了後しばらく待ち (closed-down), その間にパケットが到着しなければコネクションの解放に入り (vacation), その後パケットが到着したらコネクションを設定し (setup), パケット転送に入るような待ち行列モデルで表現される. 報告では, 集団到着を含む MAP (BMAP) でパケット到着をモデル化し, 補助変数法により系内パケット数分布等を導出した.

1997年09月20日

第129回部会報告

日時:
7月19日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
28名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「ファクシミリ網のトラヒック問題について」
    河西憲一(NTT)

    ファクシミリ網とは, 契約ユーザからのファックス送信要求を受け付け, それを自動的に指定宛先に届ける網システムであり, 同報通信機能(最大1万宛先)をその特徴とする. 本発表ではこのシステムにおける同報展開装置の挙動をマルコフ型モデルで定式化し, 最大スループット(最大処理できる単位時間当りの通信数)を求めた. この結果は同報通信の完了時間等を評価するのに用いられる.
  2. 「ITC 15 (15th International Teletraffic Congress) 参加報告」
    高橋敬隆(NTT)

    ITC とは各種研究機関, 大学, メーカー, 通信事業者のトラヒック研究者や技術者が一堂に会し, 理論と実際の両面から議論する会議であり, 今年はワシントンDCで開催された. 今後の会議予定等については http://www.itc-iac.org/ を参照.
  3. 「Networks of queues with signals」
    Xiuli Chao (New Jersey Institute of Technology)

    ある生産システムでは, 検査の結果で製品が不良と判断されるとそれに関連した製造中の製品も不良とみなされ生産ラインから取り除かれる場合がある. Signal とはこのような挙動を表わすために通常の待ち行列モデルに導入された概念であり, 客をシステムから削除するといった何らかの制御のトリガとなるものである. 本発表では signal とは何かを始めとし, signalを含む網モデルの積形式解に至るまでを解説した.

1997年07月19日

第128回部会報告

日時:
6月21日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
24名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「セルフサイジングネットワーク」
    住田修一(NTT)

    ATM (Asynchronous Transfer Mode) 技術を用いたネットワークでは, 各対地間に設定されたパス (VP: Virtual Path) の容量を比較的容易に変更できる. セルフサイジングネットワークとはこの特徴を用いて, 時間とともに変化するトラヒックに合わせた網リソースの最適な配分を実現しようとするものである. 本発表ではその基本的概念と実験システムにおける結果を報告した.
  2. 「データ伝送サービスにおける状態依存型通信価格の適用効果」
    中村元(KDD)

    網の混雑状況によって通信価格が変化し, それを通知されたユーザがその価格に応じて通信要求を変更するようなデータ通信について, 注目するリンクの使用状況をM/M 型待ち行列モデルとして定式化し, 解析した. このモデルでは状態に対応して価格が決まり, その価格に応じてサービスの終了率が変化する. 解析結果より, ユーザ行動モデルの変化に対する網に加わる通信量や収益のロバスト性等が示された.

1997年06月21日

第127回部会報告

日時:
5月17日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
30名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Transient behavior in queuing theory: The role of the fundamental matrix」
    Julian Keilson (Rochester Univ.)

    連続時間マルコフ連鎖の fundamental matrix とは, 推移確率行列を時間に関して積分(ただし, その極限行列を差し引いてから)したものとして定義され, 様々な特性量を表現する上で重要な役割を果たす. 本講演ではその fundamental matrix の基本的な性質と初通過時間等への適用について広範囲に渡り解説した.
  2. 「A study on stability analysis for high-speed networks based on statistical physics」
    会田雅樹(NTT)

    大規模高速通信網におけるグローバルな評価量としてスループット(転送中の総データ量)を考え, それを統計力学とのアナロジーからマルコフ型モデルにより定式化した. さらにその定式化を用いて, 一方が不安定(時間と共にスループットがゼロに近づく), もう一方が安定である2種類の分散型フロー制御網の挙動を現象論的に表現した.

1997年05月17日

第126回部会報告

日時:
3月15日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
20名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「構内LANトラヒックの多重化特性について」
    土屋利明(NTT研究所)

    コンピュータ通信の ATM 網上で実現を想定した LAN 間通信におけるトラヒックの多重化特性を, パケットレベルの実測データを入力トラヒックとしたセルレベルシミュレーションにより分析した. 結果として, GCRA (generic cell rate algorithm) に基づいて平滑化されたセル流の特性は, 非常に短い時間内では SCR (sustanable cell rate) 及び MBS (maximum burst size) の影響を受けるが, 比較的長い持間では SCR が支配的になる等が示された.
  2. 「On the tail distribution of a fluid queue with a stationary Gaussian input rate process」
    小林和朝(NEC C&C研究所)

    入力がガウス過程(フラクタルブラウン運動を含む)で表現されるモデルに対して, 待ち行列長の補分布の近似式を提案した.この近似式は, ある関係を満たす時間 t* と, (0, t*] 内の到着量の分散により表現される. さらに, 実測データを用いたシミュレーションにより, この近似式の精度を確認するとともに,待ち行列長の補分布が t* より長い時間での相関には影響されないという結果が示された.

1997年03月15日

第125回部会報告

日時:
2月15日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
22名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Asymptotic properties in a quasi-birth-and-death process with a countable number of phases」
    高橋幸雄(東京工業大学)

    行列解析では通常, 位相の数を有限としているが, 定常分布の行列幾何形式はその数を加算個にしても成り立ち, この拡張によって応用上より広いクラスのモデルが扱えるようになる. しかし, 有限の場合に成り立つ性質がどこまで当てはまるかはあまり明らかになっていない. 本報告では位相数が加算個である準出生死滅過程について, 定常分布の裾が漸近的に幾何形式となる必要条件を示した. さらに, その結果を応用して, 最短待ち行列選択規律に従う並列待ち行列(待ち行列数は2)の漸近分布を求めた.
  2. 「A MAP/SM/1 queue with service times depending on the arrival process」
    町原文明(東京電機大学)

    到着を Markovian Arrival Process (MAP) 等に拡張したM/G/1 タイプモデルでは, 待ち時間分布の LST 等について通常の M/G/1 モデルと同様の表現形式(一方はスカラー, もう一方は行列で表現されている)が成り立つ. そして, そのような性質を保存した範囲で到着やサービスの過程をどこまで拡張できるかが関心事となる. 本報告では, 客のサービス時間がその客の到着直前における到着過程の位相に依存するような,MAP/SM/1 モデルの拡張を考え, 初通過時間を用いた解析により残余仕事量分布の LST 等を求めた. このモデルに対しても,やはり M/G/1 モデルと同様の表現形式が成り立つ.

1997年02月15日

第124回部会報告

日時:
12月21日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館西3A号館515セミナー室
出席:
33名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「2層型待ち行列網モデルとその応用」
    紀一誠(NECC&C研究所)

    コンピュータ制御系の性能評価モデルとして2層型待ち行列網モデルを提案し, その近似解析法を示した. このモデルは,CPU やメモリといったハードウェアレベルを表わす下位層と,それらが抽象化して用いられるソフトウェアレベルを表わす上位層から成る. 上位層が無限サーバ待ち行列網の場合は積形式解が存在するが, それ以外では存在しない. そこで上位層のサービス時間を下位層のスループットで代用することで積形式解が存在する形にモデルを変形し, 解析を行った.
  2. 「Separability in a multi-node queueing system with a common setup server」
    山崎源治(都立科学技術大学)

    セットアップ処理を行う共通の単一サーバを持つ並列待ち行列システムの性能を, CSQ(専用のセットアップサーバがあるモデル)と CVQ(セットアップサーバがバケーションに出るモデル)という2種類の単一待ち行列モデルの性能によって表わす方法について報告した. 各待ち行列の待ち室数が1の場合には,注目している待ち行列の系内状態に関する定常分布は, 対応する CSQ と CVQ の定常分布の線形結合で表現できるが示された.また, 同様の線形結合が待ち室数が1よりも大きい場合でもよい近似値を与えることが数値例により示された.

1996年12月21日

第123回部会報告

日時:
11月16日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
29名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Quasi-reversibility とその拡張」
    宮沢政清(東京理科大学)

    待ち行列網において quasi-reversibility は各ノードからの出力過程がポアソンになるという性質を持ち, その網モデルは定常分布の積形式解をもつ. 本報告では状態依存ルーチング等をカバーする, より一般的な離散状態マルコフ型モデルによる定式化を行い, その上で linear(時間反転させた過程におけるある種の退去率が元の過程のそれと一致するという性質)ではない quasi-reversible な網モデルについての解析結果を示した. 本結果を利用することで, quasi-reversible でないモデルの上限等を得ることもできる.
  2. 「A single-server queue with threshold setup/vacation time and its application to IP over ATM networks」
    高橋敬隆(NTT), 北爪秀雄(NTT)

    Busy period 終了後, ある時間内に新たな客が到着した場合にはその客のサービスを直ちに開始するが, それ以降に到着した場合には setup time (サービス開始までに強制的に待たされる時間)が必要となる M/G/1 待ち行列モデルに対し, delay cycle 法を用いて待ち時間分布のLSTを求めた. このモデルは, ATM コネクションの設定時間を setup time とおくことで, IP over ATM 網(ATMを用いて IPパケット通信を実現する網)でのパケット遅延解析に応用される.

1996年11月16日

第122回部会報告

日時:
10月19日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
29名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「The importance sampling simulation of MMPP/D/1 queueing」
    中川健治(長岡技術科学大学)

    希少事象の定常確率をシミュレーションによって高速に求める手法としてインポータンスサンプリング (IS) 法がある. このIS 法を ATM 網(非常に小さなセル廃棄率が要求される)での代表的なキューイングモデルである MMPP/D/1 に適用し, 待ち行列長の補分布を高速で求める手法を示した. ここで, IS 法の確率測度変換に必要となる最適なシミュレーション分布は,待ち行列モデルの状態変化を表す推移確率のモーメント母関数に関する方程式の解を用いて与えられる. さらに, 待ち行列長の補分布が通常のモンテカルロ法に比べて極端に短い時間で得られることを数値例により示した.
  2. 「ATM 交換機におけるセルの選択的廃棄制御について」
    小沢利久, 木原健司, 朝香卓也(NTT)

    ATM 網を用いたパケット通信では, あるパケットを構成するセルが一つでも廃棄されるとそのパケット全体が損失となるため,バッファ輻輳によりパケットスループットが大きく低下する. それを防ぐ方法として, ATM の AAL3/4 で提供されるパケットサイズ情報を用いたセルの選択的廃棄制御を提案した. この方法では間隔をおいて到着するセルを集団で到着するものと見做し, WBAS (whole batch acceptance scheme) によってパケット毎に受け付けの可否判断を行う. 提案方法を用いると高負荷でもパケットスループットが維持されることをシミュレーションにより示した.

1996年10月19日

第121回部会報告

日時:
9月21日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
22名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Exploiting partial information in queueing systems」
    増田靖(慶応義塾大学)

    ある時間に待ち行列システムを観測した時にそれが混雑していれば, 直感的にはより多くの客が来ていると期待する. しかし, そのような期待に対しては反例が存在するため, 問題はその期待が成立する条件に移る. この問題に対し, M(t)/GI/1/K 及び PF2/GI/K ではその期待が成立する事を定理として示した. この定理により, これらの待ち行列モデルでは, 例えば区間 (0, t] での到着客数が多いほど(時刻0 での系内客数を固定),時刻 t で系内客数が m+1 人以上である確率がより大きくなる等の性質が得られる.
  2. 「Symmetric slotted ring models with general arrival processes」
    山崎源治(東京都立科学技術大学)

    GI 入力 (PH分布で表現), 有限バッファのマルチスロッティド・リングモデルを近似解析した. 各ステーションにおける到着及びサービスの特性は同じ(対称)であり, 一度捕捉されたスロットは転送先で解放されるものとする. この時, あるステーションの前を通過しようとしているデータがそのステーション宛である確率は 2/ N (N はステーションの数)となる. この性質と, ステーションにデータのある確率が系の他の部分の状態と独立であるという仮定を用いて, パケット廃棄率や平均待ち時間等を求めた.

1996年09月21日

第120回部会報告

日時:
6月15日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館
出席:
30名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「A unified analysis of the queue length distribution in MX(k)/G/1/N and GI /MY(k)/1/N Queues」
    馬場裕(横浜国立大学)

    到着率が系内客数に依存する集団ポアソン入力モデルを, 残余サービス時間を用いた補助変数法で解析し, 任意時点における系内客数分布の変換形を求めた. さらに, それを基に分布を数値計算するための反復アルゴリズムを示した. この入力モデルは PBAS (partial batch acceptance scheme) や WBAS (whole batch acceptance scheme) といった集団の受け付け方法を表現することができる. さらに,集団でサービスが終了するモデルについて, その系内客数分布がこの結果を利用して求められることを示した.
  2. 「Product form queueing networks with concurrent movements」
    山下英明(駒沢大学), 宮沢政清(東京理科大学)

    到着数と退去数の組を表す事象が, 状態(系内客数ベクトル)に依存しないポアソン過程に従って発生する待ち行列ネットワークについて, 積形式解の存在条件とその解を示した. このモデルでは状態に依存せずに退去数が決まるため, 系内客数以上の退去が発生した場合はそのノードの系内客数をゼロとし, かつ, 到着は一切起きないと仮定した.状態依存到着のないジャクソンネットワークはこのモデルに含まれる. さらに, 付加的な集団到着をこのモデルに加える事で積形式解が存在する. 系内客数分布について,付加的な到着を加えたモデルは元のモデルの上限を与えていると考えられることから, 本結果は元のモデルの近似解析法を与える.

1996年06月15日

第119回部会報告

日時:
5月25日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館
出席:
30名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Correlated input queues arising out of high speed communication networks」
    町原文明(東京電機大学), 高橋敬隆(NTT), 高橋幸雄(東工大)

    相関のある到着を表す代表的なマルコフ型モデルとして, N-process (versatile Markovian point process), CPH-process (compound Phase-type Markov renewal process), BMAP (bacth Markovian arrival process) がある. 本報告ではN-process が CPH-process で表現可能なこと, 及び BMAP と CPH-process が互いに他を用いて表現可能なことを示した. この結果と一般に言われている N-process と BMAP の同値性により, 3つの到着モデルの同値性が導かれる. また, MMPP/M/1 の出力過程が CPH-process で表現できないなど, この分野におけるこれからの課題についても示した.
  2. 「A simple analysis for an M/GI/1/N queue with vacation time and exhaustive service discipline」
    Andreas Frey (NTT), Yoshitaka Takahashi (NTT)

    Lee はバケーションの完了時点も含めた隠れマルコフでこのモデルを解析したが, 本報告では客の退去時点直後の系内客数に注目することでよりシンプルな解析法を示した. Finch の定理の一般化により, 任意時点における系内客数分布は退去時点直後の系内客数分布を用いて求められる. さらに, バケーションとサービスの残余時間を考えることで待ち時間分布 (LST) が得られる.

1996年05月25日

第118回部会報告

日時:
4月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
28名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「UC Berkeley 滞在記: 新しい自己相関のある到着過程モデルの研究」
    豊泉洋(NTT)

    到着間隔が一定の区間とランダムな区間がある確率に従って出現する到着過程モデル (G(m,α)と命名) の提案と, 自己相関のある到着過程の G(m,α) を用いた近似法, 及び G(m,α)/M/1 待ち行列モデルの解析結果について, 交換研究員として一年間滞在した UC Berkeley の様子を交えながら報告した.
  2. 「Leaky bucket with gate algorithm for connection-setup congestion control in multimedia networks」
    木村卓巳(NTT)

    複数のコネクションを同時に利用するようなサービスからのコネクション設定要求を一つのグループと考え, そのグループ単位での受け付け率を向上させる輻輳制御法として, 待ち客数に依存してゲートが開閉する方法を提案し, シミュレーションによる評価及び簡易モデルでの解析結果を示した.

1996年04月20日

第117回部会報告

日時:
3月16日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「回線交換網における網リソース使用量の安定化」
    中村元, 小田稔周(KDD研究所)

    発呼時に網が割当帯域を定めるサービスにおいて, 網リソースの使用量が安定するような帯域割当アルゴリズムを提案, シミュレーションで有効性を示した.
  2. 「トレース駆動シミュレーションを用いた性能予測技術」
    加藤宣弘(東芝)

    計算機の開発時にその性能を事前に精度よく予測する手法として, アドレス・トレースをワークロードとして用いるシミュレーション技術を紹介, また事例を通してその有効性を示した.

1996年03月16日

第116回部会報告

日時:
2月17日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「アラン分散を用いたATM空き帯域推定法」
    会田雅樹(NTT通網研(横須賀))

    Variable Bit Rate (VBR) と Available Bit Rate (ABR) の2つのサービスクラスが混在する ATM ネットワークにおいて, ABR サービスに利用できる空き帯域の推定法を提案, 同時に拡散過程を用いてその性能解析を行った.
  2. 「ニューラルネットによる通信ネットワーク制御」
    河東晴子(三菱電機)

    通信ネットワークにおける最適ルーティング問題をニューラルネットで解くための新しいアルゴリズムを提案した.

1996年02月17日

第115回部会報告

日時:
12月16日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
28名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Asymptotic analysis of large queueing networks with finite populations」
    Y. Kogan (AT&T Bell Lab.)

    The evaluation of the normalization constant (partition function) for large product-form queueing networks with finite populations is a well known difficult problem. We apply the saddle-point method for asymptotic evaluation of the partition function using its integral representation in complex space. This representation is provided by the inverse Cauchy formula applied to the generating function of the partition function. An important advantage of this approach is that for many networks the partition generating function has a simple explicit expression. Asymptotic approximations result in bottleneck analysis and explicit formulas for performance measures of interest for light, moderate and heavy traffic. We provide unform asymptotic approximations and error bounds for generalized Engset models and for single chain closed queueing networks. For multichain networks the results are derived using the theory of homologies and multidimensional complex residues. Applications to performance analysis of new telecommunication services are given.

    積形式解をもつ閉鎖型の大規模待ち行列網において, 正規化定数を近似的に計算する手法 (The Saddle Point Method) を提案, さまざまな閉鎖型待ち行列網に適用できることを示した.

  2. 「Toward credit-based control performance for ABR services: via queueing network model with window flow control」
    北爪秀雄, 石塚美加, 高橋敬隆(NTT通信網研究所)

    ATM 網の ABR (Available Bit rate) サービスにおけるクレジットベースのフロー制御について, 従来のウインドウフロー制御との差異を示し, そのモデル化を議論した.

1995年12月16日

第114回部会報告

日時:
11月18日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
25名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「ATM 網を介したMPEG動画像伝送特性に関する一検討」
    品川和弘, 太田能, 小野里好邦(群馬大)

    動画像圧縮方式 MPEG を用いた場合のトラヒック発生パターンをマルコフ連鎖でモデル化を行い, ATM 多重の性能解析を行った.
  2. 「空間的に斉次なブロック構造をもつマルコフ連鎖の定常分布」
    牧本直樹(東工大)

    マルコフ連鎖を表現する状態遷移行列が空間的に斉次なブロック構造をもつ場合に定常分布の裾が指数的に減衰することを示し, その減衰率を議論した.

1995年11月18日

第113回部会報告

日時:
10月14日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
24名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Some results in the theory of priority systems with orientation」
    George Konstantin Mishkoy (モルドバ共和国科学アカデミー数学研究所応用数学科長)

    Priority queuing systems of type Mr/Gr/1 with different service disciplines, including D/D/1, are considered. Analytical expressions for the main characteristics of such systems are presented. Most of them are obtained in the form of recurrent functional equations, Laplase-Stieltjes transforms and generating functions. The nonstationary case is investigated. Algorithms for numerical analysis of these characteristics is elaborated. Software based on the Object-Oriented Programming is displeid.

    優先権ありの M/G/1 タイプの待ち行列で, 異なったサービス規律に対して統一的な関数方程式を導き, その関数方程式を数値的に解くためのアルゴリズムを示した.

  2. 「セルラー通信システムの性能評価モデル」
    坂巻賢一, 高木英明(筑波大)

    移動通信において, 無線ゾーンを移動するために生じるゾーン内のトラヒックの変動を考慮してモデル化を行い, そのトラヒック解析を行った.

1995年10月14日

第112回部会報告

日時:
9月16日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
28名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Optimization by simulation: An M^x/G/1 queue with two service models」
    Rein Novel (Free University of Amsterdam)

    バッチ到着, 単一サーバ, 2サービスモードの待ち行列モデルにおいて, 複数のモード切り換えルールに対する複数の平均客数を一回のシミュレーションで推定するアルゴリズムを示した.
  2. 「Satisfying QOS standard with combined strategy for CAC and UPC」
    塩田茂雄(NTT)

    ATM 網において, 情報源側で申告パラメータに適合するように制御されたセル流に対して, 網のセル廃棄率の上限式を導き, この上限式を用いた呼接続制御方式を提案した.

1995年09月16日

第111回部会報告

日時:
7月22日(土)13:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
30名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「Does Markov-modulation increase the waiting time?」
    Andreas Frey (University of Ulm)

    待ち行列モデルにおいて, ポアソンと Markov-modulation の2つ到着過程の場合に対して待ち時間分布を議論. Markov-modulation の方が待ち時間が長くなる傾向にあることを理論的に示した.
  2. 「ATMにおけるフロー制御と関連待ち行列モデル」
    横谷哲也(三菱電機)

    ATM ネットワークの標準化団体で現在議論となっているいくつかのフロー制御方式を紹介. これらのフロー制御方式に関して, 今まで解析されているフロー制御モデルとは異なることを示し, 問題提起を行った.
  3. 「特別講演:“Applications of service networks; Modelling, analysis, inference”」
    Avi Mandelbaum (Israel Institute of Technology)

    銀行業務などのサービス業務で起こる待ち行列のモデル化と解析に関して, ご経験を交えながらその方法論と課題についてご講演を頂いた.

1995年07月22日

第110回部会報告

日時:
6月17日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
26名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「m 段直列型待ち行列のサービス順序の解析とその応用」
    松本学, 川島武(防衛大学校)

    ブロッキング有りの直列型待ち行列を議論. 1段目と2段目のサービス分布の形とスループットの関係を示した.
  2. 「Gaussian-type variable input rate processes for ATM multiplexer」
    小林和朝(NEC), 高橋幸雄(東工大)

    ビデオトラヒックも扱える上記タイトルの入力レート過程を導入し, この入力レート過程に対する ATM Multiplexer の蓄積量分布の上界と下界を与えた.

1995年06月17日

第109回部会報告

日時:
5月20日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
32名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「資源要求のあるセントラルサーバーモデル」
    木下俊之(日立)

    資源要求のあるセントラルサーバーモデルを解析. 本モデルは一般に積形式解にならないため, 近似解析が一般的であったが,ここでは大規模なモデルに対して厳密解を導き, 数値例を示した.
  2. 「Exhaustive サービスモデルにおける fundamental period の役割」
    町原文明(NTT)

    Vacation のある待ち行列モデルにおいて, 定常分布が Vaction 部分と Service 部分に Decomposition できるクラスについて議論し, Decomposition が可能なクラスの外延を示唆した.

1995年05月20日

第108回部会報告

日時:
4月15日(土)14:00〜16:30
場所:
東京工業大学本館1-94号室
出席:
22名
テーマと講師(*は講演者):
  1. 「既存の資源制約下におけるソフトウェアの最適配置」
    所健一(電力中央研究所)

    分散システムにおいて, レスポンスタイムを最小にするソフトウエア配置を議論. BCMP 型待ち行列網モデルから導かれるレスポンスタイムを最小化するアルゴリズムを示した.
  2. 「Delay and overflow of discrete-time priority queue with burst arrivals and partial buffer sharing」
    山下英明(駒澤大学)

    バースト到着でプライオリティーがあり, それに対応してブッファーが分割されている離散時間の待ち行列モデルを解析. バッファオバーフローの確率と遅延時間を得る計算アルゴリズムを示した.

1995年04月15日