第328回部会報告

日時:
2026年7月18日 14:00~17:00
出席
27名
場所:
東京科学大学 大岡山キャンパス 西8号館(W)809号室
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 都市環境下の空対地通信における同時見通し確率解析
    木村達明,岩本亜利咲(同志社大学)
    ミリ波通信は、5Gにおける通信容量の拡大および高速化を実現する技術として活用が期待されている。しかし、遮蔽物による伝搬損失が大きいことから、通信リンクの見通し内(LOS)環境および見通し外(NLOS)環境を考慮した評価が不可欠である。これまで、単一リンクにおける見通し内確率については広く解析が行われてきた一方で、複数リンク間の見通し内確率の空間相関に関する検討は十分になされていなかった。
    本講演では、マンハッタン・ポアソン線過程に基づくグリッド状都市空間モデルおよび空対地通信環境を対象として、地上ユーザが2機のUAVと同時に見通しリンクを有する確率について、確率幾何学的アプローチを用いた解析が行われた。さらに、数値例を用いて解析結果の妥当性が検証されるとともに、都市構造やUAV配置が見通し確率の空間相関に与える影響が明らかにされた。
  2. Interlacing point process と相関構造
    白井朋之(九州大学マス・フォア・インダストリ研究所)
    Interlacing(編み込み、絡み合い)構造は、さまざまな場面に自然に現れる構造として知られている。典型例として、実数零点のみをもつ nnn 次多項式 pnp_npn​ を考えると、その導関数 pn′p’_npn′​ の零点は、もとの nnn 個の実数零点の間に一つずつ存在し、互いに interlace することが知られている。さらに、微分を繰り返すことで、零点群は階層的な interlacing 構造を形成する。
    本講演では、このような階層的な点配置をランダムな設定へ拡張したものを interlacing point process として扱い、その相関構造について考察が行われた。特に、いくつかのモデルを対象として、異なる階層に属する点の間に現れる相関構造が調査され、その解析結果が報告された。

(2026年7月24日更新)

第327回部会報告

日時:
2026年6月20日 14:30~16:40
出席
35名
場所:
東京科学大学 大岡山キャンパス 西8号館E棟10階大会議室
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 研究の縦糸と横糸に纏わる話
    室田一雄 (東京都立大学・統計数理研究所 客員教授)
    講演者の研究成果は、これまで学会発表や論文として公表され、客観的な情報として共有されてきた。一方で、当該研究に着手した理由、その実施に至る経緯、あるいは当初の意図などについては、講演者本人のみが把握しており、公に語られる機会はほとんどなかった。本講演では、講演者自身がこれまでの研究活動を振り返り、これらの背景や意図に関する内容が紹介された。

(2026年6月23日更新)

第326回部会報告

日時:
2026年5月16日 14:00~17:00
出席
25名
場所:
ハイブリッド開催(東京科学大学 大岡山キャンパス 西8号館(W)809号室 + オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 分布曖昧性下での混雑施設の費用回収定理
    河瀬 理貴*、酒井 高良(東京科学大学)
    混雑は交通インフラや通信ネットワークなど、有限容量をもつ多様な施設で普遍的に生じる現象であり、効率的な容量配分のためには混雑課金が重要となる。しかし、容量が十分でない場合には利用者に高い課金負担が生じ、また容量増強には資本費用を賄う財源が必要となる。
    この問題に対し、Mohring and Harwitz(1962)が提唱した費用回収定理は、社会最適な混雑課金による総収入が最適容量の資本費用と一致するという理論的基準を与える。
    本講演では、需要分布が正確には把握できない「分布曖昧性」の下で、この費用回収定理がどのように拡張されるかが議論された。分布的ロバスト最適化の枠組みを用い、社会厚生のワーストケース期待値を最大化する容量と限界費用課金を導入し、以下の2つの費用回収性を保証する十分条件が示された:
    (1) 不確実性集合内に、総課金収入の期待値と資本費用が一致する分布が存在すること
    (2) 不確実性集合内の任意の分布に対し、総課金収入の期待値が資本費用以上となること
    特に性質(2)は、分布曖昧性の下でも費用回収定理が堅牢に維持されることを意味する。さらに、全変動距離に基づく不確実性集合や、スペクトルリスク尺度の双対表現に基づく不確実性集合が、これらの性質を満たす具体例として紹介された。これにより、真の需要分布が不確実な状況でも、混雑課金と容量設計の整合性を理論的に保証できることが示された。
  2. 待ち行列ゲームにおけるワークロードの情報開示効果と料金設計
    中村 彩音(慶應義塾大学)
    客がワークロード(正確な待ち時間)に基づいて参入を判断する待ち行列ゲームは古くから研究されてきたが、料金設計や情報開示の効果については十分に理解されていない。本講演では、戦略的な客がワークロード閾値に基づき参入可否を決める M/M/1 型の Full-information モデルを対象に、収益および社会厚生の観点から最適な料金・閾値設計が分析された。
    収益最大化、社会最適、ナッシュ均衡に対応するワークロード閾値が特徴づけられ、特に、系内人数に基づく古典的な Naor の不等式が、連続状態であるワークロードにおいても同様の順序関係として成立することが示された。
    さらに、Observable モデル(系内人数を開示)および Unobservable モデル(情報非開示)と比較することで、開示される情報の粒度が均衡下のシステム性能に与える影響が、理論解析と数値実験の両面から検討された。
    その結果、より詳細な情報を開示することが必ずしも性能向上につながらない場合があることが明らかにされ、情報設計と料金設計の相互作用に関する新たな知見が得られた。

(2026年5月21日更新)

第325回部会報告

日時:
2026年3月7日 14:00~17:00
出席
26名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館3階 1-3会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. Stochastic Approximation Algorithms for Queueing Systems with Strategic Customers
    Liron Ravner(University of Haifa)
    非マルコフ型待ち行列システムの性能解析や制御は、閉形式解が得られないことが多く、シミュレーションに依存せざるを得ないという課題がある。特に、顧客が期待待ち時間に基づいて参加・離脱を戦略的に判断する場合、顧客行動とシステム性能が相互に影響し合うフィードバック構造が生じ、解析はさらに複雑化する。
    本発表では、このような戦略的顧客を含む一般的な待ち行列モデルに対して適用可能な適応型確率近似(stochastic approximation)アルゴリズムが紹介された。提案手法は、待ち行列システムの再生性(regenerative structure)を活用することで、緩やかな正則性条件の下で漸近的な性能保証を与える点に特徴がある。
    応用例として、
    – 分散型ナッシュ均衡(Decentralized Nash equilibrium)
    – 独占的事業者による収益最大化(Monopolistic revenue maximization)
    の2つの典型的な制御問題が取り上げられ、提案アルゴリズムの効率性が示された。これにより、戦略的行動を伴う非マルコフ型待ち行列に対して、従来困難であった性能評価・最適化を統一的かつ実用的に扱える可能性が示唆された。

(2026年3月12日更新)

第324回部会報告

日時:
2025年12月20日 14:00~17:00
出席
30名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館2階 1-2会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. Heavy traffic limit with discontinuous coefficients via non-standard semimartingale decomposition
    宮沢 政清(東京理科大学)
    状態依存型待ち行列モデルに対する拡散近似の新しい解析手法が紹介された。従来、重負荷下の待ち行列過程が反射型拡散過程へ弱収束することは、主に流体近似と中心極限定理に基づいて示されてきたが、到着率・サービス率が待ち行列長に応じて変化する状態依存型モデルでは、M/M 型を除き既存手法の適用が難しいという課題があった。
    本発表では、Daley & Miyazawa (2019) による点過程の非標準的セミマルチンゲール分解を用いることで、到着間隔やサービス時間が一般分布に従う GI/G 型の多段階状態依存型単一窓口待ち行列に対して、拡散近似極限を明確に導けることが示された。得られる極限過程は、ドリフトおよび拡散係数が不連続となる反射型拡散過程であり、待ち行列長が特定のレベルに達することで到着・サービス速度が変化する多段階構造を自然に表現できる点が強調された。
  2. Delayed Markov Chain
    紀 一誠(神奈川大学)
    単純マルコフ連鎖を含む新しいクラスとして Delayed Markov Chain(DMC:遅れマルコフ連鎖)が構成され、その基本的性質が紹介された。DMC は多重マルコフ連鎖の部分集合であり、複数の状態遷移確率に基づく遅れを伴う状態変化を、状態爆発を起こすことなく扱える点に特徴がある。これにより、異なる情報源や更新タイミングに依存した状態遷移を統一的に記述できる可能性について述べられた。
    さらに、DMC を連続時間へ拡張した CDMC(Continuous Time Delayed Markov Chain)が定義され、これに関連した時間遅れ項を含む微分方程式の基本的性質が議論された。応用例として、CDMC 型の M/M/1(有限バッファ)モデルが取り上げられ、遅れを伴う状態遷移が待ち行列挙動に与える影響について考察が行われた。

(2025年12月21日更新)

 

第323回部会報告

日時:
2025年7月19日 14:00~17:00
出席
24名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館2階 1-2会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 熱方程式の解を構成する粒子運動
    三好 啓也(埼玉大学)
    熱方程式の解に内在する粒子運動が、解の形によってブラウン運動や等速直線運動など多様な解釈が可能であることが指摘された。熱方程式を波動方程式で近似し輸送方程式として書き直すことでランダムウォークを導き、進行波解などを例に、解を再構成する粒子運動を見つけ出す手法が考察された。
  2. 自動スケーリングシステムの確率モデルにおける厳密解析と効率的な数値計算手法
    Phung-Duc Tuan(筑波大学)
    クラウドコンピューティングにおける自動スケーリングシステムが、確率モデルを用いて解析された。需要の不確実性とリソース調達の遅延を考慮した上で、エネルギー消費や応答時間といった性能評価指標を厳密に導出する手法と、その効率的な数値計算に関する最新の研究成果が紹介された。

(2025年8月20日更新)

 

第322回部会報告

日時:
2025年6月21日(土) 14:00〜17:00
出席
27名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館2階 1-2会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. エレファントランダムウォークの極限挙動
    竹居 正登 (横浜国立大学)
    1次元格子上の離散時間ランダムウォークが扱われ、履歴に基づく推移則が導入された。p=3/4を境に挙動が変化することが示され、非一様な履歴選択に対する極限挙動も紹介された。
  2. 有限呼源再呼モデルの再検討
    河西 憲一 (群馬大学)
    再呼のある待ち行列モデルが検討され、サービス時間が一般分布に従い呼源が有限の場合について解析された。再呼間隔が指数分布に従う場合の再呼回数分布が数値的に評価され、他の分布の場合もシミュレーションで影響が評価された。

(2025年6月30日更新)

 

第321回部会報告

日時:
2025年5月17日(土) 14:00〜17:00
出席
30名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館2階 1-2会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 山陽小野田市の若者の転入出要因分析
    高田 寛之 (山陽小野田市立山口東京理科大学)
    山陽小野田市から依頼された本研究では、若者世帯の転入・転出要因が匿名アンケートに基づき分析された。機械学習により識別モデルが構築され、Shapley値で要因の影響が評価された。転入には親族や住宅環境、転出には住み替えが影響したと示された。
  2. AIエージェントの安全性
    恐神 貴行 (IBM東京基礎研究所)
    近年発展した自律型AIエージェントのリスクが概観され、その性質を理解・制御する手法が議論された。特に行動時間の長期化によるリスク増大が示され、安全性を保証するためのテスト戦略が多腕バンディット問題の枠組みで定式化された。

(2025年6月30日更新)

 

第320回部会報告

日時:
2025年4月19日(土) 14:00〜17:00
出席
29名
場所:
ハイブリッド開催 (東海大学 品川キャンパス 1号館2階 1-2会議室&オンライン)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 頂点が増えるグラフ上のランダムウォークのはなし
    来嶋 秀治 (滋賀大学)
    本講演では、頂点集合が変化する(増える)グラフ上のランダムウォークの解析について解説された。そして、増えるクーポン収集問題や、成長するk分木上のランダムウォークの根再帰性などの成果について紹介された。
  2. ゲート式単独休暇をとる単一サーバ待ち行列について
    滝根 哲哉 (大阪大学)
    本講演では、ゲート式単独休暇をとる単一サーバ待ち行列モデルを中心に、M/G/1 の枠組みで系内客数の確率母関数と待ち時間分布のラプラス変換(LST)の導出、そして、このモデルの応用として集団サービス待ち行列に関する結果が議論された。また、到着がMAPに従う場合の解析の難しさや既存研究の誤りについても述べられた。

(2025年4月23日更新)