支部講演会ルポ

2019年1月20日(日)に,名古屋市立大学ミッドタウン名駅サテライト(JPタワー名古屋5階)において,OR学会中部支部2018年度第2回支部講演会が20名(大学関係者16名,一般4名)の参加者を迎えて開催された.

1人目の講演者の増山繁氏(豊橋技術科学大学 工学部 名誉教授)からは,「言語・グラフネットワーク・最適化~人工知能(AI)の基礎として~」という題目で,自然言語処理とグラフネットワークについて,講演者の研究成果を含めて解説して頂いた.最初に,自然言語処理において意味をどう扱うかという問題が解説された.さらに応用例として,企業業績の要因を記事集合から抽出する,文章を段落で分ける,文章を要約するなどの研究成果が報告された.次に,グラフネットワークにおける最小辺ランキング問題や,非終端集合を伴う最小全域木問題,プラットホーム割り当てなどの研究成果が報告された.さらに,今後の課題・展望として特許文書から中心技術用語を抽出する,議員発言の事実検証を行うなどの可能性が示された.質疑応答では,情報処理技術が進んでも,価値の判断は人間の仕事として残るという興味深い話がなされた.情報処理技術とORの有効性を知り,今後の発展性・方向性を考える上で大変参考となる講演であった.

sige増山繁氏(豊橋技術科学大学)

2人目の講演は,小鷹研理氏(名古屋市立大学 芸術工学部 准教授)により「身体と視点のVirtual Reality」という題目で,講演者の研究室が作成してきた仮想現実を体験できる作品群の紹介と,作品を体験した人が受ける感覚について調査した結果が報告された.作品はヘッドマウントディスプレイや鏡を用いて様々な錯覚を与えるものであった.例えば,上を見上げているのに,下を(しかも自分自身を)見下ろして幽体離脱をしているかのような感覚を与える作品が紹介された.さらに,錯覚が体験者に与える影響,姿勢による体感の変化や,錯覚の個人差などの調査が報告された.とくに錯覚を強く感じる人と全く感じない人が,その中間程度に感じる人の層よりもそれぞれ多くなる事例が報告された. 大変面白い発表であり,聴講者は作品を体験したときの錯覚を想像しながら発表を聞かれたことと思われる.ORではあまり扱われてこなかった錯覚や体感といった問題を扱っている点,芸術と工学・認知科学の融合という点などからも大変興味深い講演であった.

kenri小鷹研理氏(名古屋市立大学)

講演に対して様々な質疑応答が活発に繰り広げられ,盛況のうちに終了した.