第44回OR学会中部支部研究発表会・特別講演会ルポ

第44回OR学会中部支部研究発表会・特別講演会ルポ

2017年3月4日(土)に,ウインクあいち愛知県立大学サテライトキャンパスにおいて,第44回OR学会中部支部研究発表会・特別講演会が54名の参加者を迎えて開催された.
研究発表会では,学生による13件の発表があり,1名に最優秀賞,2名に優秀賞が授与された.

最優秀賞は,名古屋大学の松下健氏による「レクトリニア多角形詰込問題に対する新しい解表現法の提案」に対して授与された.同氏は,レクトリニア多角形詰込問題において, 配置するx 座標が与えられている図形に対し, 詰込み順序に基づく新たな解表現法を提案した.レクトリニア多角形詰込問題には,VLSI デザインや木材切り出しなど幅広い応用がある.同氏は,計算実験により,提案した手法が既存手法に比べて計算効率と精度を改善していることを示した.
また1つ目の優秀賞は,南山大学の堀篤史氏による「マルチリーダー・フォロワーゲームに対する Gauss-Seidel 型ペナルティ法」に対して授与された.マルチリーダー・フォロワーゲームは,非協力ゲームにおいて,一部の複数のプレイヤーが残りのプレイヤーより先に戦略を決められるようなゲームのことであり,寡占市場においてよく見られるモデルである.同氏は,マルチリーダー・フォロワーゲーム(multi-L/F) に対する新しい数値解析アルゴリズムを提案した.
さらに2つ目の優秀賞は,愛知県立大学の森友哉氏による「フォグコンピューティングにおける多様なフォグノードを用いたクラウドの分散処理手法の検討」に対して授与された.同氏は,IoT(Internet of Things)を実現するために必要不可欠なフォグコンピューティングと呼ばれる分散コンピューティングシステムにおける振舞いを,VCRS型待ち行列システムとして表現し,そのジョブ割り当て戦略を検討し評価した.
研究発表会では,オペレーションズ・リサーチ学会の次世代の担う若手研究者によるフレッシュな発表が行われ,また参加者との間で活発な議論が交わされ,参加者に刺激を与える発表会となった.

研究発表会に引き続いて,豊橋技術科学大学の増山繁先生による特別講演会が開催された.増山先生からは,講演題目「最小木問題とその周辺」の下,枝に重みが与えられている連結無向グラフに対して全ての節点間に路が出来るような,枝の重みの総和が最小の 全域木を求める問題である最小木問題は効率良く解けることが良く知られている. それに対し身近な通信ネット ワーク・デザインへの適用を想定し、葉にすることが可能な節点集合を指定した問題を考えると枝の重みを全て1と した場合でもNP困難になる.そこで,効率よく解けるグラフの部分クラスを構造的特徴に注意しつつ解説していただいた. 講演は,参加者のこの分野への関心を大いに高める内容であった.