【開催報告】ヘルスケアのOR研究会第20回(学生発表会)

日時:2024年12月21日(土)14:30~16:45
場所:
政策研究大学院大学 研究会室4A+オンライン(Zoom)
出席者:34名

 

人間ドックにおける検査待ち時間の短縮-実データに基づく要因分析-
関口春菜*(東京理科大学),津田柊翠(神戸大学),伊藤真理(神戸大学),伊藤和哉(東京理科大学),高嶋隆太(東京理科大学),那須一欽(メディメッセ桜十字),折茂靖司(城山ガーデン桜十字クリニック)

近年,予防医学への関心が高まり,人間ドックをはじめとする健康診断の受診者が増加している.これに伴い,検査待ち時間の長期化が課題となっている.特に,予測不可能な待ち時間は受診者だけでなく,医師や看護師にも多大な負担を与えており,病院側も限られたリソースの中で効率的な運用が求められている.本発表では,人間ドックの待ち時間削減を目的に,実データを用いた分析を行うことで待ち時間の原因を特定し,それを踏まえた最適化モデルが提案された.具体的には,検査時間や待ち時間などの不確実要因に対する確率的モデリングについて紹介された.なお,本報告は発表予定者が体調不良で欠席したため,共同研究者である伊藤真理先生により報告が実施された.

 

患者の状態と投与履歴を考慮したRNNを用いた患者状態の表現学習
梶原 唯斗*(大阪電気通信大学),阪口昌彦(大阪電気通信大学)

長期的な薬剤の投与によって患者の回復を図る場合,患者の過去の状態の推移と過去の薬剤投与の履歴を考慮して薬剤を選択する必要がある.履歴を反映した患者の状態に基づく薬剤選択の分析手法が提案された.本研究では,HIV感染症を例に分析を行い,多剤併用療法を開始したHIV感染症患者の検査値と投与薬剤の合成患者データを使用し,リカレントニューラルネットワークを用いて履歴を含んだ新たな特徴量を作成するネットワークモデルが構築された.このモデルを強化学習等に活用することで, 履歴と現在の状態に対しての投与薬剤選択分析の一手法となる可能性が示された.

 

手術と病床の統合的スケジューリング―均衡モデルによる意思決定-
加藤亜里紗*(東京理科大学),伊藤真理(神戸大学),伊藤和哉(東京理科大学),高嶋隆太(東京理科大学),橋本学(国立がん研究センター東病院)

本報告は発表者の体調不良により未実施.

 

訪問リハビリテーションにおけるスケジューリングの現状と課題:あきる台病院の挑戦
諸井優依花*(電気通信大学),軽部幸起(電気通信大学),伊藤真理(神戸大学),中村信一(あきる台病院),斎藤篤史(あきる台病院),海老澤健太(医療法人財団 暁)

セルフマネジメントが困難な高齢重症患者や,通院が困難な者に対するサービスとして,訪問リハビリサービス(リハビリ)がある.これらのサービスでは,介護スタッフが利用者の自宅を訪問し,リハビリや利用者の家族へのアドバイスを行う.介護スタッフのスケジュール作成では,スタッフの作業内容や利用者の希望時間帯など,様々な制約条件を考慮する必要がある.更に,利用者の増減やスタッフの体調不良による急な予定変更があるため,スケジュール作成者の負担となっている.本発表では,訪問リハビリテーションにおけるスケジューリングの現状と課題に対するあきる台病院の挑戦が紹介された.

 

微生物検査室における検査技師のシフトスケジューリング
津田柊翠*(神戸大学),伊藤真理(神戸大学),上蓑義典(慶應義塾大学),土谷隆(政策研究大学院大学)

慶應義塾大学病院内の微生物検査部門における検査技師のシフト作成業務は主任技師が担っており,限られた人的リソースである検査技師に適切なタスクを割り当てるために多大な時間と手間をかけている.本報告では,微生物検査に必要な検査技師の最適なシフトを作成するシフトスケジューリングモデルが提案された.微生物検査室の管理者へのヒアリングを通し,業務シフト作成時に必要なハード制約や検査技師の働き方向上に寄与するソフト制約が説明された.微生物検査室のシフトスケジューリングでは,検査技師の不足に伴う他部門からの検査技師の応援や,特定の検査においては検査技師の技量を考慮する必要がある.本報告では,検査技師のシフトスケジューリング問題とそのモデリングが紹介された.

 

最後に幹事より,3月に行われるOR学会2025年春季研究発表会における当研究部会の特別セッションや,来年度の機関紙の特集号についての説明が行われた.