【開催案内】第305回 待ち行列研究部会 (11月19日)

第305回 「待ち行列研究部会」

日時:令和4年11月19日 14:00~17:00
場所:ハイブリッド (オンライン&東京工業大学 大岡山キャンパス 西8号館(W)809号室)

※新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては完全オンライン開催に移行します.

■ 対面参加の方へ:
対面会場にお越しになる方は,以下の事項 (「東京工業大学に来訪される方へ」からの抜粋) へのご協力をお願いいたします.

○ 来訪時には,体調不良でないことを必ずご確認ください.
○ 新型インフルエンザ等対策措置法に基づく緊急事態宣言あるいはまん延防止重点措置の対象地域から来学される方は,宣言・措置下での来学の必要性についてより慎重にご検討ください.
○ マスク着用,手洗い,アルコール消毒等の感染拡大防止策徹底にご協力ください.
○ 来学のために公共交通機関を利用するときも含め,来学中は原則としてマスクを着用してください.
○ 本学では,教職員に対しスマートフォンへの新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)のインストールを推奨しています.この点についてもご協力頂ければ幸いです.

■ オンライン参加の方へ:
オンラインで参加される方は,以下の URL より参加登録をお願いいたします.
https://us02web.zoom.us/meeting/register/tZYsc-uhpjosG9AHzBW5pp6LXc5I9bJPuIG6

テーマと講師

1.M/G/1型マルコフ連鎖に対するレベル増分切断近似の誤差の解析
大内 克久(京都大学),増山 博之 (東京都立大学)

M/G/1型マルコフ連鎖の定常分布はRamaswamiの再帰式を用いて計算可能である. しかしながら, Ramaswamiの再帰式には行列の無限和が含まれるため, 実装には適切な近似を行う必要がある. レベル増分切断近似は, 元のマルコフ連鎖を一推移あたりのレベル増分に上界のあるマルコフ連鎖で近似する手法で, Ramaswamiの再帰式を実装する近似手法の一つである. 本講演では, M/G/1型マルコフ連鎖に対するレベル増分切断近似によって発生する誤差について議論する. まず, レベル増分分布の平衡分布が長裾的・軽裾的であるというそれぞれの条件のもとで, 近似誤差とレベル増分平衡分布が漸近的に等価であることを示す. また, Foster-Lyapunovのドリフト条件の要素を用いて表される近似誤差を導出する.

2.任意の分布に従うバッチサイズ・サービス開始間隔をもつ集団サービス型複数サーバ待ち行列について
中村 彩音(筑波大学),Phung-Duc Tuan (筑波大学)

デマンド型交通や物流をはじめとする幅広い分野において、待合室で客(人や物)がグループを組み、待ち客数が任意の分布によって指定されたバッチサイズに到達した際にサービスが開始される現象が見受けられる。充分な車両等が存在するような大規模なシステムを想定し、この状況を集団サービス型無限サーバ待ち行列(M/M^X/∞待ち行列)と見なすことで、3次元連続時間マルコフ連鎖として解析可能であることを示す。具体的には、階乗モーメント母関数法を用い、定常状態におけるビジーサーバ数のモーメントの厳密解、および定常分布の無限級数解の導出結果を紹介する。さらにモーメントの厳密解を用いて稼働サーバ数に関する中心極限定理を与える。
また、M/M^X/∞待ち行列に特定の極限操作を与えることで、任意の分布に従う時間間隔において集団でサービスが開始される状況を説明可能であることを紹介する。このモデルは、待ち客数に依らず与えられた時間間隔で発車する従来型のバス等に対応する。
発表の終盤では、上記の2つのサービス開始基準を持つ集団サービス型待ち行列に対して、有限のサーバ数やバッチの定員、サーバの稼働コスト等のより現実的な仮定に基づいた解析についても触れる。顧客の戦略的な行動を考慮した上でのこれらの待ち行列モデルに対するゲーム理論的解析の可能性や今後の展望について言及する。さらに、2つのサービス開始基準を融合させたモビリティプラットフォーム (Car/Ride-Share) についての発表者らのこれまでの研究についても併せて紹介する。

3.マルコフ連鎖を用いた微分方程式の近似モデルの提案とその極限解析
渡辺 樹(早稲田大学)

本講演ではHigh-density limitと呼ばれるマルコフ連鎖を用いた微分方程式の近似手法を紹介する。この手法はHomogenizationなどの一般的なスケール極限とは違い、パラメーターとして時空間に加えて粒子の初期量(あるいは粒子サイズ)を導入しており、それによって解析の対象となる確率変数や極限の取り方が大きく異なるという特徴がある。前半では講演者がこれまでに得られている結果について先行研究とともに紹介する。そして後半では最近取り組んでいる問題として、制御理論を導入したコンタロールされたマルコフ過程を用いた場合の近似とその極限解析について議論する。