【開催報告】第304回 「待ち行列研究部会」(7月16日)

【待ち行列部会】第304回 部会 開催報告

日時:
2022年7月16日(土) 14:00〜17:00
出席:
62名
場所:
ハイブリッド開催 (オンライン&早稲田大学国際会議場 第3会議室)
テーマと発表者(*は講演者):
  1. 簡単なマルコフ解析でできる待ち行列モデルの評価
    山下 英明(東京都立大学)
    本講演では,初学者を対象に,簡単なマルコフ解析で評価できる待ち行列モデルの例が紹介された.初めに,M/M/c/K 待ち行列を用いて,サーバの多重化の効果ならびに逆効果を検証できることが述べられた.通常は多重化によって呼損率や平均待ち時間は減少するが,サービス時間の異なる複数の利用客が存在する場合に多重化を行うと,サービス時間の長い客がサーバをブロックすることでかえって性能が悪化する場合があり,この対処法として優先窓口を設けることの効果が議論された.次に,残余サービス時間を状態にとるマルコフ連鎖を考えることで一般的な離散時間待ち行列モデルが解析可能となることが説明され,その応用として,到着がバーストと呼ばれる単位で発生する待ち行列に対する解析法が紹介された.
  2. フェイクニュースとその訂正記事の相互作用から考えるトイレットペーパー買い占め事件
    会田 雅樹(東京都立大学)
    本講演では,フェイクニュースの拡散とその訂正情報の拡散の間に起こる相互作用をモデル化するアプローチとして,活性因子と抑制因子からなる反応拡散系としての定式化が紹介された.フェイクニュースを抑制因子,訂正情報を活性因子と対応づけることで,訂正情報の広がりがフェイクニュース自体の拡散に加担してしまうことや,フェイクニュースが広まると訂正情報を広げるのが難しくなることが表現され,このような仮定に基づいて,反応拡散系においてチューリングパターンが発生する (ユーザクラスタが生じる) 条件が議論された.特に,訂正情報の拡散速度を上げることでチューリングパターンが発生しなくなることが示された.