2024年度 関西支部シンポジウムのご案内
2024年度日本OR学会関西支部シンポジウム
テーマ:モビリティのための数理とOR
日 時:2024年11月26日(火) 13:00~17:10
会 場:キャンパスプラザ京都4F 第4講義室
住所:〒600-8216 京都市下京区西洞院通塩小路下る東塩小路町939
URL:https://www.consortium.or.jp/about-cp-kyoto/access
形 態:対面形式
参加費:無料
主 催:日本オペレーションズ・リサーチ学会関西支部
実行委員長:山中 翔太(トヨタ自動車)
シンポジウムと懇親会の参加申し込みは こちら
シンポジウム参加締切:2024年11月25日(月)
懇親会参加締切:2024年11月16日(土)
趣 旨:
近年、CASE(Connected, Autonomous, Shared, Electric)や MaaS(Mobility as a Service)などのモビリティに関する技術革新や、コロナ禍といった環境の変化により、新たな課題が浮上しています。例えば、人々の移動においては、カーシェアやライドシェアといった共有モビリティサービスの普及に伴い、個々の多様な需要に応じた意思決定が求められています。また、物流においては「2024年問題」として知られる輸送能力不足が深刻な懸念材料となり、サプライチェーンの効率化が急務となっています。このような背景から、適切な意思決定を支援するために数理やORの重要性が一層高まっていると考えられます。
そこで、本シンポジウムでは、大学の研究者による基礎的な研究だけでなく、企業におけるモビリティに関する応用研究事例をご紹介いただき、大学と企業の双方から課題意識を共有して研究の方向性について議論することで、今後のORの発展に寄与することを目指します。
プログラム:
13:00-13:05 開会挨拶
13:05-13:45 「移動効率と有高適正化を両立する現金共同装填計画の最適化」
中尾 芳隆氏(キヤノンITソリューションズ株式会社)
13:55-14:35 「最適輸送理論のシンクホーンアルゴリズムとその
ワンウェイ型カーシェアリングサービスへの応用」
櫻間 一徳氏(大阪大学)
14:45-15:25 「移動を促進するための経路計画」
大滝 啓介氏(株式会社豊田中央研究所)
15:35-16:15 「モビリティを支える交通信号制御とOR」
弘津 雄三氏(パナソニックコネクト株式会社)
16:25-17:05 「通勤カープールの可能性を探る数理モデルとその展開」
繁野 麻衣子氏(筑波大学)
17:05-17:10 閉会挨拶
講演内容:
- 「移動効率と有高適正化を両立する現金共同装填計画の最適化」
中尾 芳隆氏(キヤノンITソリューションズ株式会社)
人・モノの移動の効率化に関わるOR問題として配送計画問題(Vehicle Routing Problem; VRP)があるが、これは配送対象の日付は所与であり日ごとに独立した問題である。それに対し、在庫配送問題(Inventory Routing Problem; IRP)では、配送先の在庫が欠品しないように在庫量を適正に維持するための適切な配送日とルートを意思決定する。本講演では、キヤノンITソリューションズが関わったIRPのいくつかの事例を紹介する。その中の代表事例として、銀行ATMへの現金補充(装填)において、複数の異なる銀行のATMの装填の共同化と計画自動化により、装填業務の効率化を実現した事例を紹介する。本事例はゆうちょ銀行様、日本ATMビジネスサービス様と実施した事例である。
- 「最適輸送理論のシンクホーンアルゴリズムとその
ワンウェイ型カーシェアリングサービスへの応用」
櫻間 一徳氏(大阪大学)
本発表では,ワンウェイ型カーシェアリングサービスにおける配車と顧客割当を同時に考慮した最適化問題を解くための,効率的なアルゴリズムを提案する.この問題は,配車コストと顧客の徒歩移動コストを目的関数にして,顧客に対して出発ステーションにおいて車両を,到着ステーションにおいて空きの駐車スロットを確保するという制約条件に帰着する.この問題は,顧客の出発・到着地からステーションまでの徒歩移動,配車による車両の移動からなる三つのバイナリ最適化問題に帰着する.三つの不均衡最適輸送問題はそれぞれの一端同士が制約条件で関係づけられた Barycenter-like 型をしている.本発表では,このような制約条件を含んだより一般的な Barycenter-like 最適輸送問題の特徴を解説し,この問題を効率的に解くためのシンクホーンアルゴリズムを基にした方法を提案する.
- 「移動を促進するための経路計画」
大滝 啓介氏(株式会社豊田中央研究所)
グラフ上の経路計画に関する最適化問題は、効率的で省エネルギーな移動や物流、インフラ計画など、幅広い分野で重要な役割を果たす問題である。古くからさまざまなアプローチが研究されており、理論的な進展にとどまらず、実世界への応用も進んでいる。本講演では、経路計画における数理的アプローチの基礎概念や手法を紹介する。さらに、近年注目されている移動の価値向上や移動促進に関するトピックに触れ、今後の課題や展望について述べる。
- 「モビリティを支える交通信号制御とOR」
弘津 雄三氏(パナソニックコネクト株式会社)
交通信号機は交差点に設置され、モビリティが交差点を安全かつ円滑に移動することに貢献している。交通流の円滑化を目的とした交通信号制御にはオペレーションズ・リサーチ(OR)の技術が活用された高度な制御も存在する。一方で、信号機の多数は、タイムテーブルで青時間を決定する方式(定周期制御)や、交通状態に応じて予め設定した青時間を選択する方式(パターン選択制御)を用いている。予め設定した青時間を単純な動作原理で動作する点は共通しているが、その青時間が交通状況に合致していない場合、渋滞を引き起こすこともある。今回はモビリティデータとOR手法を活用した青時間の再設計について説明する。
- 「通勤カープールの可能性を探る数理モデルとその展開」
繁野 麻衣子氏(筑波大学)
二酸化炭素排出量削減や渋滞緩和を目的としたエコ通勤の一つの方法に,マイカー通勤者が車の相乗りを行うカープールがある.カープールは事業化されて積極的に運用されている国がある一方で,日本ではいくつかの実証実験が行われてはいるが実用化には至っていない.このような背景のもと,通勤カープールを実用化するための課題を明確にし,課題解決のための数理モデルを与える.具体的には,安全性や法規制への対応に加え,安定した運用のための利用キャンセルへの対応や,待ち時間の削減などを考える.