日本OR学会 関西支部 2022 年度若手研究発表会 優秀発表賞について

2022年度日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部若手研究発表会 優秀発表賞について,下記の通りご報告いたします.なお,本賞は本研究発表会の開催日(2022年10月 29日)付けで授与するものとします. また授賞式は2023年度の日本オペレーションズ・リサーチ学会関西支部総会で行う予定です.

1.授与する賞

「日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部若手研究発表会 表彰規定」に基づき,日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部若手研究発表会 優秀発表賞を授与する.

2.賞の授与対象

2022年10月29日(土)に「2022年度日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部若手研究発表会」が大阪大学吹田キャンパスにて開催された.本発表会で行われた口頭発表(全14件)が審査対象である.
※14件の発表については本研究発表会のプログラム(別添)を参照のこと.

3.選考結果およびその理由

下記の通り4件の優秀発表賞を選定した(以下,筆頭著者氏名の五十音順に記載).

○有薗 舜(奈良先端科学技術大学院大学)
タイトル:「時間変化するネットワークに対する二分決定グラフを用いた信頼性評価法」
選考理由:本発表では,時間変化するネットワークに対する新しい信頼性評価法が提案された.ネットワーク信頼性評価とは,ネットワークの各リンクが独立に故障すると仮定したとき,指定された2点間で正しく通信が行える確率を求める問題である.提案手法は,静的ネットワークの信頼性評価に対する二分決定グラフを用いた手法を,時間変化するネットワークに適用できるよう拡張したものである.提案手法に関して,計算量の理論的評価及び実験的評価が行われた.提案手法のアイデアおよび数値実験結果が分かりやすく述べられた優れた研究発表であると認められた.

○高橋 翔大(総合研究大学院大学)
タイトル:「Bregman 距離を用いた近接 DC アルゴリズムとその応用」
受賞理由:本発表では,凸関数同士の差で表せる関数を扱う difference of convex functions (DC) 最適化問題に対して,Bregman 距離を利用した近接 DC アルゴリズムおよびその応用例が紹介された.発表の前半では,DC 最適化問題に対しよく知られている近接 DC アルゴリズムが L-smooth 性を要求する課題を挙げ,これを解決する Bregman 近接 DC アルゴリズムとその加速化が提案された.発表の後半では,信号処理の問題であるブラインド・デコンボリューションを取り上げ,DC 分解および適切な Bregman 距離の設定により提案アルゴリズムを適用する手法が,数値実験結果とともに紹介された.研究背景と課題および提案手法のアイディアが明確に述べられるとともに,実問題への応用例が効果的に示された,優れた研究発表であった.

○寺尾 樹哉(京都大学)
タイトル:「除外ターミナルを含む同一面最短点素パス問題に対するアルゴリズム」
受賞理由:本発表では,一つのターミナルを除いて全ての頂点対が共通の面上にある場合における最短点素パス問題に対し,初の乱択多項式時間アルゴリズムが提案された.最短点素パス問題は特殊な場合を除き理論的計算量は未解明であるが,入力が平面グラフで頂点対が全て共通の面上にある場合には多項式時間アルゴリズムが知られている.本発表ではこの問題設定を拡張した除外ターミナルを含む同一面最短点素パス問題が提案され,最短点素(A + B)-パス問題の解法と組合せ論的な洞察に基づくアルゴリズムが提案された.取り組んでいる問題の背景と課題,ならびに,提案手法のアイディアが分かりやすく述べられた,優れた研究発表であると認められた.

○山田 光隆(京都大学)
タイトル:「シンプレクティックシュティーフェル多様体上の共役勾配法」
受賞理由:本発表では,シンプレクティック固有値問題などへの応用をもつシンプレクティックシュティーフェル多様体上の最適化問題に対して,共役勾配法が提案された.一般のリーマン多様体上の共役勾配法を適用するには個別の多様体ごとに議論が必要であり,発表の前半では,シンプレクティックシュティーフェル多様体における課題とその解決方法が丁寧に説明された.また,発表の後半では,提案手法を実際に最適化問題に適用することで,既存のシンプレクティックシュティーフェル多様体上の最急降下法を大幅に上回る性能を示す数値結果が紹介された.研究動機としての問題がもつ困難な点,ならびにその解決のための工夫が分かりやすく述べられた,優れた研究発表であった.

以上

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