日本OR学会 関西支部 2021 年度若手研究発表会 優秀発表賞について

2021 年度日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部 若手研究発表会 優秀発表賞 について,下記の通りご報告いたします.なお,本賞は本研究発表会の閉会日(2021 年 10 月 17 日)付けで授与するものと致します. また授賞式は 2022 年度の日本オペレーションズ・リサーチ学会関西支部総会で行う予定です.

1. 授与する賞
「日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部若手研究発表会 表彰規定」に基づき,日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部 若手研究発表会 優秀発表賞を授与する.

2. 賞の授与対象
2021 年 10 月 16 日 (土) 〜 10 月 17 日 (日) に「日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部 SSOR 2021」がオンライン開催された.関西支部 SSOR 2021 における口頭発表 (全15件) は「関西支部若手研究発表会」として開催され,これら15件が審査対象である. ※15 件の発表については本研究発表会のプログラム(別添)を参照のこと.kansaiSSOR2021_program

3. 選考結果
関西支部 SSOR 2021 における口頭発表 (全15件) は「関西支部若手研究発表会」として開催され,これらのうち以下4 件に「日本オペレーションズ・リサーチ学会 関西支部 若手研究発表会 優秀発表賞」が授与する.
(筆頭著者氏名の五十音順に記載)

○堀 篤史 (京都大学)
タイトル:「確率変分不等式問題に対する分布的ロバスト期待残差最小化」
選考理由:
本発表では,確率変分不等式問題における期待残差最小化が考察された.確率変分不等式に特定の分布を仮定せず,期待値ならびに共分散に関する上下限によって定められた分布不確実性集合上でワーストケースの期待残差を最小化するという問題設定の下,確率論的な原問題を決定論的な半無限計画問題に変換し,さらに半正定値計画問題として保守的近似する手法が提案された.また,提案手法によって得られた最適解の事後的な振る舞いが数値実験により考察された.問題設定や提案手法のアイデア,ならびに数値実験の結果が大変分かりやすく述べられた優れた研究発表であった.

○馬原 凌河 (京都大学)
タイトル:「不可分財に対するほとんど無羨望な割当 (EFX) の存在性」
選考理由:
本発表では,不可分財に対する無羨望割当概念の一つであるEnvy-free up to any item (EFX) 割当の存在性に関する新しい理論的結果が示された.EFX割当とは,(i) エージェント集合,(ii) 不可分財集合,ならびに (iii) 不可分財の部分集合に対する各エージェントの評価関数の三つが与えられた状況の下で,任意の不可分財をひとつ取り除けば,どのエージェントも他のエージェントを羨望しないような割当のことをいう.本発表では,EFX 割当が存在するための従来よりも一般的な十分条件を導出したことに加え,従来のアプローチの限界を示す反例を提示するなど,理論的に優れた発表内容であると認められた.

○山田 耀平 (大阪大学)
タイトル:「クラウドゲーミングにおける最適な画面更新間隔の D/M/1 待ち行列を用いた解析」
選考理由:
本発表では,クラウドゲーミングシステムをD/M/1待ち行列としてモデル化することで,リアルタイム性の指標であるAge of Information (AoI) が解析された.特に,AoIの確率分布が満たす陽表現公式を導出し,ユーザ端末の画面更新とクラウドサーバの情報送信の最適なタイミングオフセットが考察された.数値実験により,AoIの時間平均値に注目する従来のアプローチでは必ずしも十分ではなく,AoIの確率分布に対する解析が重要であることが示された.情報通信システムのモデル化と解析において確率分布に着目する有効性を明確に示した,優れた研究発表であると認められた.

○吉渡 叶 (名古屋大学)
タイトル:「頂点被覆を用いた辺ケイレスに対するアルゴリズム」
選考理由:
本発表では,クラムなどを一般化した「辺ケイレス」と呼ばれるゲームに対し,与えられた局面の必勝判定を行なうアルゴリズムが考察された.勝敗が自明な子局面から開始し,動的計画法に基づいて局面の勝敗を定めていくことで元の局面の必勝判定を行なう基本アルゴリズム,ならびに,頂点被覆に注目して部分グラフ群が成す同値類を定義することで冗長な計算を省略する効率的なアルゴリズムが提案され,さらにそれらの計算量オーダが導出された.優れた研究内容に加え,考察対象の問題の面白さが分かりやすく伝えられた秀逸な研究発表であった.

以上

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