企業事例紹介(東京ガス)

事例紹介:東京ガス株式会社

LNG(液化天然ガス)ローリー販売事業における配車台数平準化による配送費用の削減

1.背景・概要

・東京ガスは首都圏エリアを中心に、1000万件以上の顧客にガスと電気に加え、様々なサービス(ガス器具販売・修理、水回り、ハウスクリーニング等)を提供している。ガス事業においては、海外からタンカーでLNG(-162℃の液化天然ガス)を輸送し、4カ所のLNG基地に受入れ都市ガスを製造し、パイプラインを通じて供給・販売している。これらのオペレーションにより、ガスを安定供給することで大きな社会的使命を果たしている。

・また、LNG基地から遠く、パイプラインが整備されていない地域の大口顧客(工場)には、顧客にLNGの貯蔵タンクを保有してもらい、LNG基地から直接ローリー車によるLNG供給を行っている。ローリー車は、一度に約15トン(一般家庭約1万件分/日)のLNGを輸送することができる。

・現在、約200台のLNGローリー車により、各顧客にはLNG基地から数日に1回の頻度でLNG供給を行っている。顧客は、自ら日々のLNG使用量を予測し、LNG在庫がタンクの上限と下限の範囲に収まるように発注を行っている。

 

ローリー事業の業務オペレーションは、LNGオーダー受注システムを用いて以下の手順で実施している。

①:顧客はLNG使用量を予測し、貯蔵タンクのLNG在庫が上下限の範囲に収まるように発注する。

②:東京ガスは顧客から受注されるたびに、配送先の地理的条件や顧客のLNG発注量を考慮しながら配送計画を更新する。

③:配送日の2日前に東京ガスから輸送会社に配送を依頼する。

④:輸送会社が配車計画を立て、LNGローリー車でLNG基地から顧客までLNGを配送する。

図.ローリー事業の業務オペレーション

 

2.課題

a:東京ガス

・東京ガスでは、顧客からの発注がピークとなる日にも配送できるように、多数のLNGローリー車を確保する必要がある。そのため、ピークに合わせた固定費(LNGローリー車保有コスト)を輸送会社に支払っている。

・顧客の需要予測の見込み違いから、頻繁に配送日の調整や変更、キャンセルなどの要望が入り、その都度オペレーターの業務負荷が高くなっている。

b:輸送会社

・物流・運送業界の2024年問題としてドライバーの労働時間制限の厳格化により、より効率的な配車計画が求められている。特に、LNG需要が高まる冬期に特定の日に配車が集中すると、必要なローリー車が不足し、顧客へのLNG供給が困難になる可能性がある。

c:顧客

・LNG使用量の予測精度が良くないと、貯蔵タンクのLNG在庫量に合わせて配送日の調整や変更が必要になるため、業務負荷が高くなっている。

 

3.解決策

以下2つのステップにより、上記課題の解決に図る。

Step1.顧客の過去のLNG使用量や工場の非稼働日情報などを特徴量として、機械学習モデルを用いて顧客のLNG使用量を予測する。

Step2. Step1で予測した顧客の日別LNG使用量に基づいて、輸送コストとピーク日の配車台数の加重平均の最小化を目的とした最適な配送計画を策定し、顧客に提案する。

 

4.定量的効果

a:東京ガス

・ピーク日の配送台数を減らすことで、LNGローリー車の確保台数を削減(数百万円/台・年)し、長期的に輸送費の固定費の低減を図る。

・顧客におけるLNG使用量の予測精度が向上することで、配送日の調整頻度が減り、オペレーターの業務負担が低減される。

b:輸送会社

・輸送ルートを最適化(各顧客から近いLNG基地から配送される)することで、ドバイバーの残業時間を減少させることができる。また、ピーク日の台数が平準化され、緊急対応の頻度も軽減される。

c:顧客

・LNG使用量予測による在庫管理、発注業務の手間が軽減される。